忘れ物
3.
3.
 
カプセルコーポレーション。
 
西の都で最も目を引く、ドーム型の建造物。
 
世界一の大企業でもあり、彼女の家でもあるこの巨大な建物の前に、彼は立っていた。
 
そのまま来客用のインターホンを押す。
 
昔はここの住民として自由に出入りしていたが、今はいくらブルマの友人だといっても 事実上他人なのだからこうしなくてはならない。
 
もっとも、筋斗雲や瞬間移動でいきなり来てしまう悟空だけは別だったようだが。
 
 
「すみませーん、お邪魔します。」
 
いくつもの厳重なチェックをクリアし、やっと住居内に入れたヤムチャはそう声をかけた。
  
「あら、ヤムチャちゃんかしら?」
 
その声に広い部屋の奥から1人の女性が返事をした。
 
そのままこちらに歩いてくる。
 
ふわふわとした金色の髪。
にこにこと可愛らしい笑顔をいつも浮かべた ブルマの母だ。
 
「まぁ〜、お久しぶりねぇ〜。
しばらく見ないうちにまたステキになっちゃって、ママ うっとりしちゃうわぁ〜。」
 
この人も娘と同様、『いい男』に目がない。
 
昔と何も変わらない夫人に、ヤムチャは笑いかけた。
 
「はは、すいません、いきなり。ご無沙汰してます。」
 
それから本題に入る。
 
「あの、ブルマに用があるんですけど…今 会えますか?」
 
「ブルマさん?」
 
夫人は少し首をかしげて答えた。
 

 
「そうねえ、ブルマさんなら たぶん ベジータちゃんとお部屋にいると思うけど…」
 
「ありがとうございます。オレ ちょっと行ってきます。」
 
以前住んでいたおかげで、ブルマの部屋の場所は分かる。
もう1度笑顔をつくって、ヤムチャはそこへ向かった。
 
ベジータも一緒というのが少し気になったが、忘れ物を届けに来ただけで彼が何かするとは思わない。
 
まぁ、大丈夫だろ。
 
そう思いながら長い廊下を歩き、部屋の前まで来ると、声をかけようとした。
 
 
「いい加減にしなさいよ!!!」
 
おーい、と言おうとして口を開けたのに、ブルマの怒鳴り声に邪魔されてしまった。
 
な…なんだ?なんなんだ?
 
すっかり出鼻をくじかれたヤムチャがふと見ると、カメラ付き個室用インターホンのモニターがオンになっていた。
 
部屋の中の様子はこれで見てとれる。
 
…見るべきではない。
 
そう思ったが、やはり気になってしまい、結局 こっそり中の様子を伺う事にした。
 
もちろん、ベジータにバレないように気を消して。
 

*前へ次へ#

3/9ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!