忘れ物
2.
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適当な飲み物を注文した後、久々だったせいもあってか ブルマのお喋りはずいぶん長く続いた。
会社の事、両親の事、夫の事、可愛い盛りの息子の事――…
そして その全てにうん、うんと丁寧に相づちを打つヤムチャの態度は さすが と言いたくなるものだった。
プレイボーイである彼は、女性が気持ちよく話せる「聞き方」を心得ている。
まあ、そのせいで このブルマとは別れてしまったのだけれど…
それでも良き友人として、こうして時々話し相手になっている。
これはこれで良い関係だ、と彼は思っていた。
「でね、聞いてよ、そいつが持ってきたエアバイクが…って やだ!
もうこんな時間じゃないの!!」
話す事に夢中になっていたブルマが突然叫んだので、ヤムチャは驚いた。
「な…なんだ、何か用でもあるのか?」
「大アリよ!」
ブルマは荷物を抱えながら答える。
「そろそろベジータのトレーニングが終わるの。アイツ最近また後先考えないような修行してるみたいだから、心配で…
ごめんねヤムチャ、代金はあたしが払っとくから!」
「お、おい、ブルマ!」
送って行こうか、と言おうとしたが、彼女は大慌てでスカイカーのカプセルを放り投げると 全速力で飛んで行ってしまった。
「あーあ…行っちまったよ。」
それにしても。と彼は考える。
ベジータか…
おそろしくプライドの高いサイヤ人。
ヤムチャが彼を初めて見たのは、彼が地球を侵略する為に宇宙からやってきた時だ。
その時の戦いで、自分は死んでしまった。
直接ではないにしろ、サイヤ人、つまりベジータに殺されたようなものだ。
だから生き返る事ができてカプセルコーポレーションに戻ってきた時、そこに彼がいた時は心底驚いた。
そして彼をここへ招き入れたのはブルマだという事実にも。
その後は本当に急展開で、ブルマと別れた後にはあっという間にトランクスが生まれ、人造人間との戦いになり…
つらつらと今までの人生を思い返していると、テーブルの上に置かれた小さな布に目がいった。
ピンク色で上品にレースがあしらわれている。
「ハンカチだな。」
どうやらブルマが忘れていったようだ。
仕方ない、届けてやるか。
元々根が親切な彼は、
それを掴み 舞空術で西の都へと向かった。
これが悲劇の幕開けだとも知らずに。
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