忘れ物
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全世界を恐怖におとしいれたセルゲームから、2年が過ぎた。
 
本当の英雄はあの世に留まり、偽の英雄がいたる所で誉め称えられる。
 
ヤムチャが今散歩しているこの街も 例外ではなかった。
 
目につく ありとあらゆる所に 【ミスター・サタン万歳!】
【彼こそが世界の救世主だ!】
【ありがとう、ミスター・サタン!!】という看板、貼り紙。
 
そのどれにも「英雄」ミスター・サタンが得意満面の笑みを浮かべている。
 
 
あんなオヤジのどこがいいんだか。
 
歩を進めつつ、ヤムチャはため息をついた。
 
「命はって戦ったのはオレ達だってのに…」
 
セルとの戦いに貢献できたかどうかはともかく、自分や仲間達は必死で戦ったのだ。
 
それをああも堂々と自分の手柄にされたのでは、やはり気分が悪い。
 
「悟空は気楽でいいよなー。」
 
こういう事を全く気に止めない、今は亡き戦友。
彼がちょっぴりうらやましくなった。
 
と、その時。
見知った後ろ姿が視界の端に映った。
 
あれは――…
 
 
「ブルマ?」
 
「あら、ヤムチャじゃない!」
 
ブルマは呼びかけに応じると、駆け寄ってきた。
 
「久しぶりね。元気にしてた?」
 
微笑んでそう言う彼女に、ヤムチャも自然と笑顔になる。
 
「ああ、まあな。そっちは?」
 
「こっちもすごい元気よ。
あ、だけどトランクスが最近よく動きまわるようになって大変でねー。ほらあの子、サイヤ人とのハーフじゃない?だからなのか分かんないけど、もうホント元気で…
てゆーかこんな所で立ち話もなんだからどこかでお茶しましょ!」
 
一気にまくし立てると、ブルマは近くにあった喫茶店のドアを押してさっさと中へ入ってしまった。
 
『相変わらずだな…』
 
はは、と苦笑して、ヤムチャはブルマの後に続いた。
 

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