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119. きになるき
カパッと お節料理に使うような重箱の蓋を開けると、色とりどりのお母さん料理が目に飛び込んで来た。・・・何故 "お母さん料理" かと言うと、目玉焼きとかほうれん草の炒めものと言った ごく普通の家庭にありそうな料理ばかりであったからだ。・・・あ。それならデートとかに持って行く手作り弁当でも同じ、か。
こじゅさんが作ったであろう、家庭感溢れる料理の詰まった弁当に 暫しの郷愁を感じてると、横から二本の腕と箸が伸びていた。
そして それらが こじゅさんの作った料理に届く前に、双方の保護者からの一喝と ペシンと叩く軽快な音が聞こえてきた。一瞬、殴るような素振りに見えたのは気のせいだろうし 気のせいだと思いたい。

「旦那。何してんの。」
「政宗様。ご自重なさいませ。」
「Don't interrupt me, 小十郎!」
「な、何をするかッ!佐助ッ!!」
「先に手を出しちゃ駄目でしょ。行儀が悪いよ。」
「しかし、佐助。俺はちゃんと合掌をしたぞ。」
「政宗様。今は全員に合わせるべきところなのです。」
「First come, first served.」
「合掌するしないの問題じゃないのッ!皆が箸持つまで待たなきゃいけないでしょーがッ!!!」
「だが、俺は 真っ白殿の分も取ろうとしてッ…!!!」
「それは俺様もちゃんとするから先に出ないのッ!!きちんとおちょきんしなさいッ!!」
「政宗様、そう言う問題ではございませぬ。奥州では貴方様が一番。しかし、此処では勝手が違うのでございます。ご自重なさってくださいませ。」
「Don't worry. I understand it. それに、俺は ただ単に真っ白の分も取ろうとしてただけだ。余計な心配はすんじゃねぇ。」
「分かりました、政宗様。しかし、それは言い訳でござりますぞ。」
「一体さっきから何の相談してるんですか、四人共。私の分は心配しなくとも、自分で取りますから大丈夫ですよ。あ、チカさん なりさん。その卵焼きと たらこスパゲッティとこれとそれとこれ、とらないでね。」
「こら!真っ白ちゃんッ!好き嫌いしないのっ!!」
「下らぬ争いをするな。まだ手を つけてはいかんのかッ!」
「お前も何だかんだ言って律儀だよな…。じゃぁ、真っ白。こいつも食えよ。偏った食事してんと 良い体になんねーぞ。」
「え。後で骨取るから後で。」
「じゃぁ、骨取ってやるから食え。」
「貴様はそいつの保護者かッ!!!」
「ぐえッ!!!」
「あ、チカさんッ!箸が落ちるッ!!」
「うぉっと!」
「・・・旦那、食事を始めようか。」
「! お、おう!!!」
「・・・政宗様、そろそろ食事を始めましょう。」
「おう…。」

チカさんの落ちる箸を受け止めようとしてたら、佐助さん、幸村さん、こじゅさん、政宗さんから ジト目で見られた。なんだ、何かしたか?自分。
そんなこんなもあって皆して手を合わせて合掌をした。いたぁだきます と言って合掌しようとしたが(何か昔 小学校の頃を思い出して言おうとしたが) なんか皆して厳粛に「いただきます」と言ったものだから、私もそれに合わせて、厳粛に「いたぁだきます」と言ってしまったではないか。なんだなんだ、この雰囲気。前までは無言で合掌したり「いただきまっす!」とか言える雰囲気であったりしたのに…あぁ、そう言えば なりさんも私と同じ 無言で合掌するタイプでは無いかッ!いや、たまに私「いただきまっす!」とか何か大好物出た時とかにハイテンションになるけどさっ!!!
とにかく、最初の 此処での食事は、厳粛な「いただきます」で、始まった。

こじゅさんの作ってくれたおかず(まず最初は宣言した通り、卵焼きっ!)を取り、もぐもぐと味を確かめる。うん、濃くて私好みの味だ。醤油はちょっともう少し少なめの方がいいかもしれないけど…。
卵焼きを食べながら空を見上げる。この木、なんだろ…。

「どうしたでござるか、真っ白殿?」
「んー?…いや、この木・・・何の木かなぁ って、思って・・・。」

幸村さんにそう返して、木の表面を撫で続ける。青々と葉を生い茂らせてはいるが、木の表面には縦に割れ目が入っている。木自体は大きくて 私達七人を木陰の中へすっぽりと収まらせている。お陰でサンサンと降り注ぐ熱い太陽の直射日光を浴びずに済んでいる。

「カラマツではござらんか?」
「松?でも、その割には表面ごつごつしてない気が・・・。」

幸村さんの返しにそう返し、木の表面を撫でる。どちらかと言うと、ごつごつ と言うよりも さらさら に近いような気が…。いや、ちょっとしたゴツゴツ感はあるけどね。ゴツゴツ感と言うより ちょくちょく感?訳分からねぇ。とにかく、出っ張りの部分は松よりも少ないと思う。そう、これだ、これ。出っ張りの部分、だ。出っ張りの部分は松のものよりも少ないと思う。

「伊吹じゃねぇのか?ほら、炎の形 してんだろ?」
「うーん・・・。」

まぁ、確かに・・・言われてみればそうかもしれない。しかし、これは広葉樹では無いかと言う期待がまだ何処かにある。

「・・・オヒョウ、か・・・?」
「オヒョウ?」
「…違うであろうな。実が成っておらん。」

そう言って なりさんは食事に戻った。実、かー…。確かに、実らしき実はまだなってない。(まだ青い実も)だから おひょう と言う名の木ではないと言う事なのだろう。

「オンコ、じゃねぇのか?背ぇ高ぇしよ。」
「Ah...確かに。」

こじゅさんの言葉に 政宗さんはそう返して、灰色の木の表面を撫でる。

「何言ってんの、アンタ達。これはコブシだよ、コブシ。」
「拳?」

佐助さんの一言に、つい拳を作って尋ねてしまう。

「・・・違う。そんなしょーもない小ネタを挟まない。」
「痛っ。」

ぺシン、と頭を叩かれてしまった。そして何だか微妙に傷付いた。…なんか、ただ単に面白いかなぁ と思ってやった事なのに・・・・・・まぁ、いっか。

「拳でござるかッ!?佐助ッ!!!」
「旦那もそんな下らない事をやらない。」

私と同じく拳を作った幸村さんもまた、佐助さんからキツイ一言を貰った。

「佐助さん、佐助さん。私、佐助さんのその一言と下らない事と言う言葉で、私、なんだか傷心中なんだけど。」
「え、ごめんね?遠まわしに言われたかった?」
「いえ。はっきりと言って下さった方がいいです。」
「そ。」

と、佐助さんは「分かった」と言うような表情を見せた笑顔を見せた。

「佐助、俺には。」
「旦那ははっきり言わないと分からないでしょーが。」

と、佐助さんは幸村さんに向かって ズバッと言い放った。

「えーっと…で、なんでコブシなの?」
「ん?」

話を変えると同時に思った疑問を佐助さんにぶつけてみる。佐助さんは聞き返しながら私の方に顔を向けた。

「えーっと、それで、なんでコブシって分かったの?」
「あぁ、それ?実。」
「実?」

佐助さんが指さした方向へ顔を上へ上げる。青々と茂る緑葉の間からは何も実らしき実は見えない。

「無いぞ、忍。」

なりさんが 何時の間にか私と同じように顔を上げて 私がふと思った疑問を 佐助さんに投げかけた。よく見れば、皆も箸を止めて佐助さんが指さす方向へと顔を上げている。

「まぁ・・・そりゃぁ、普通の人だったら見えないわな。」
「佐助、俺は武将だ。」
「違う違う、旦那。そう言う意味じゃない。」
「なら、どー言う意味だってんだ。」

幸村さんに引き続き、政宗さんが佐助さんに問いかける。

「あっははー。何、皆して俺様いじめてんの?俺様忍だから察してほしいなぁー…なぁんてね!」

と、佐助さんは 幸村さんと政宗さんの問いに おどけてそう返す。あぁ、そうか そう言う意味か。と理解して佐助さんの顔を見る。先程私が投げかけた問いにも是非答えて欲しい。
佐助さんは しーん と黙った雰囲気を汲み取って ふと私の顔を見てから、また説明を始めた。

「んーっとね、俺様の目には葉と葉の間に埋まる赤い実が見えんの。で、木の表面とか撫でた時の感触からして、まー…昔聞いた『コブシ』って奴かねぇ って思ってそう判断しただけ。」

はい、終わり!とでも言うように佐助さんは パンパンと手を叩いた。いや、実際に「はい、終わり!」って言ってたけど。

「ほぅ・・・そうか。佐助。佐助って物知りだったのだな!」
「何 旦那。その、『だった』って。俺様ちょっと泣けてきちゃうよー?」
「伊吹じゃねえのか…。」
「オヒョウじゃねぇのか…。」
「…銀杏は無いのか。」
「毛利の旦那。何俺様に期待してんの。それに鬼の旦那も竜の旦那も何残念そうな顔して俺を見てんの。止めてくんない?」
「銀杏の木、かー…あれ、あぶって食べると美味しいよね。食べ過ぎると鼻血出るって聞いたけど。」
「は?痙攣を起こして死に至るのではないのか。」
「え。」

何それ怖い。

「まー…食べれるっちゃぁ食べれるけど、食べすぎたら危険って事でしょ、それって。」
「まぁ、そう言う事であろうな。」
「え。お前、正気?」
「おい乳首。どう言う意味だ。」
「佐助!今度の任務は、炙った銀杏の実を持ってくる事だぞッ!!!!」
「旦那。多分旦那が食べたら(食べ過ぎて)中毒起こすから、俺はその任務を謹んでお断りさせて貰うよ。」
「なにッ!!?!」

あ、何か佐助さんが断った理由分かるような気がする。なんか、絶対銀杏の実炙って持っていったら、すぐお代りとか言って一杯食べそうだもんな。そして鼻血ぶーって出しそうだから断ったんだろうなー…。

「おい、真っ白。零してんぞ。」
「え、あ。ごめん こじゅさん・・・って、いいよ。拭かなくて。自分で拭くから。」
「黙ってちゃんとしてろ。」
「・・・はーい…。」
「・・・・・・。」
「・・・政宗様。そのようなお顔をしてはなりませぬぞ。ついでに零れておりますよ。」
「・・・自分で出来るぜ。」

あ、政宗さんが こじゅさんから布巾取り上げて自分で零した所拭いた。そして こじゅさんが何だか落ち込んでいる。

「えーっと・・・。」
「いらん慰めは不要だぜ、真っ白。」
「・・・んー…まぁ、分かった。」
「・・・ 真っ白、come to me. 」
「 む!真っ白殿ッ!!政宗殿の所よりも某の所に来てほしいでござるッ!!!」
「や、別にこのままでもいいんじゃねえのか。」
「動くなよ、真っ白。」
「いや、その前に何故そうなった。何故こう言う事になっちゃったの?何故こう言う事になっちゃたのか まだ分からないんだけど・・・。」
「あれ?真っ白ちゃん、俺達が三日前に求婚した事、忘れちゃったわけ?」
「・・・・・・・・・・・・・・…・・ さぁ皆!食事を始めようぜッ!!!!!!!」

「掃除でござるよ、真っ白殿。」
「mistakeしてるぜ、真っ白?」
「掃除だぜ、真っ白。」
「なぁに馬鹿げた事言ってんだぁ?真っ白。」
「混乱しておるのか、真っ白。」
「俺様から逃げられると思ってんの?」

「・・・・・・・・・・・・・・さざ 、 あ!皆あ!掃除を始めようぜッ!!!!!!チカさんとなりさんと幸むとまさはきこりねッ!!!さすげとこじさんは何時も通りと同じくだぜッっ!!!そして私はまだ来ぬ電気屋さんを待つッ!!!!!さらばッ!!!!!!!!」

あ、かなり噛んだな。と、真田主従と政宗は思った。
あ、転んだな。膝擦り向けてねぇよな? と、元親・小十郎は思った。
何がきこりだ 何が何時も通りだ。 と、元就は心の中で突っ込んだ。
真っ白はヒートアップした爆発寸前の頭を必死で支えながら、何度も躓きながらも必死で坂を下った。ある意味逃走。

爆発寸前の頭を抱えて 転びながらも転ぶ寸前で立ち止まりながらも、真っ白は山の入口まで大疾走していった。

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あきゅろす。
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