[携帯モード] [URL送信]
120. こだい
「ぜぇはぁ ぜぇ、はあ・・・」

上半身を落として息を吐く。肩を落として膝小僧に両手を当てて上半身を支えて 深く深く大きく深呼吸する。い、一体何だったんだ、あれは・・・。ちくしょ。皆して寄ってたかっていじめやがって・・・え、いじめ?いや、いじりかもしんないな…。まぁ、いいや。
とにかく、皆に宣言した通り ここで未だ来ぬ電気屋を待とう。うん。水道屋だか光熱引く屋かどうかは知らんが。
ふぅ、と一息吐いて近くにあった岩に座る。なんか、座るにはちょうどぴったりの窪みです。これ。なんか 入口辺りにある岩とかって、なんか座っちゃいけないって言う感じがするけど、これに座る前に周りとかそれを調べた結果、文字とか絵らしきものが書かれた跡が無かったので、座らせてもらった。
ふぅ、と また一息吐く。プランプランとサンダルに履き替えた自分の足を見る。チカさんに落とされた時に靴もずぶ濡れになったので、佐助さんからサンダルを貰って履き替えたものだ。今、私達の家となる所の縁の廊下には、私とチカさんの服と靴が干されている。
・・・いや、下着は無事だよ!下着はちゃんと脱いで袋の中に入れて私の鞄の中に入れたから!うん、穿いてないんじゃ・・・って突っ込みは無しッ!濃い色のシャツで良かった、なんて思ってるから!更につなぎっぽいものを持ってきてくれてよかったッ!なんて、思ってるから!!!・・・なんで佐助さん、あんなに着替えを持っていたんだろう・・・。あれ、多分・・・幸村さんとか政宗さん達が水浴びするであろう事を予測してかな・・・。生憎、チカさんに合うような服は無かったが。サイズが。チカさん、海の男だから不要だって感じたのかな・・・。前、海の男だって事 チラッとだけど聞いたし。
ふぅ、とまた一息を吐く。ここにドライヤーなんてものはないから、髪はまだ半乾きだ。湿気を含む髪が頬を掠る。ごしごし と こじゅさんが首に掛けたタオルで私の頭を拭いてくれたおかげで、髪がずぶ濡れ と言う事にはならなかった。・・・いや、加齢臭とか言った匂いはしなかったよ!断じてッ!!!ただ、ずぶ濡れだったし、こじゅさん自身が汗掻いてたお陰で・・・って、何言ってんだ、自分!!?!頭沸いたのかよ!!?!
はぁ・・・ と、今度は頭を抱えて悩む。うん、ちょっと変だ。ちょっと と言うより、かなり変な事、と言うより失礼な事を考えていたのかもしんない。
指にかかり足からずり落ちるサンダルを揺れさせて ぼんやりとその事を考える。
気紛れに顔を空へ上げる。さんさんと太陽の光が降りしきるものだから、真っ青な青空があるものだと思ったら、何か誰かが影作ってたお陰で真っ青な空が見えなかった。

「・・・・・・」
「・・・・・・・・・。」

鋭い眼光。些か不機嫌なご様子。鋭い眼光が閉ざされ 代わりに口みたいなところから はぁ と言う溜め息が洩れた。「あ゙っ」と声を出す前に むぎゅつ と何かで口を塞がれる。白いタオルらしきものだ。よく見れば私の鞄らしきものから救急箱らしきものが見える。
鋭い眼光は そのまま私から離れ、視界から消えた。同時に足に強い痛みが走ったが、かろうじて声を抑えた。

「・・・・・・なりさん…。」
「・・・・・・・・・」

なんとなく、口を開いてもいい空気かな と思って、私は彼の名前、なりさん と、声をかけることができた。なりさんは未だ答えず 黙々と私の擦り剥いた足を手当てしている。先程まで痛まなかった膝小僧が、痛い。

「なりさん。」
「・・・。」

なりさんは黙ったまま、私の傷の手当てをする。心なしか、その、使っている消毒液・・・もしや・・・。

「あの、なりさん。」
「・・・・・・。」

なりさんは未だ黙々と作業をしている。可笑しい。普通なら、消毒はもう終わってもいいはずだ。それにしても傷口が物凄く、沁みる。

「なりさん。」
「・・・・・・。」

私は ますます泣きそうになる。なりさんは未だ答えず、黙々と作業をしている。全く答えない。私は我慢できなくて、音を上げることにした。

「き、傷口が・・・も、ものすごく し、しみ る・・・。」
「当たり前だ。傷の手当てをしているのだからな。」
「や、そーいう・・・の、じゃ なくて・・・。」
「我が直々に貴様の傷の手当てをしているのだ。光栄に思え。」
「や、あの・・・傷どうこうの問題じゃなくて、そのしょ 消毒液…物凄く沁みるんですが・・・!!」

だから、できれば 凄く。使ってほしくない。や、もう沁みすぎて泣きたい位だけど。
しかし、なりさんは そんな私の願いを聞き入れず、普通に傷の手当てを続けている。

「や、その・・・もう、止めて欲しいです。そんなにぺたぺた塗らないで下さい。本当、痛いんで。沁みるんで。」
「何を言っているか。貴様の傷を消毒してやってるのだ。ありがたく思え。」
「や、そーいうのじゃなくて・・・。」

なりさんは未だに 脱脂綿を消毒液で浸したやつを 私の膝小僧の傷に ぺたぺた やってる。うん、消毒してくれてるのは分かる。だけど、もう 私の足、消毒液でべたべたなんだよ・・・。もう、凄く沁みるんだよ、ヒリヒリするんだよ・・・。

「あの、なりさん・・・。もういい もういいから!後は自分でやるからッ!!もう沁みるから!痛いからッッ!!!」
「何?!! 貴様・・・我が直々に貴様の傷の手当てをしてやっていると言うのに、我の好意を無下にする気かッッ!!!?!」
「や、無下とかそー言うのじゃなくて・・・。」

あぁ、もう。頭を抱えて考える。なりさんが手当てしてくれてるのを無下にする気は さらさらない。が あの、その・・・やりすぎなんです。ものすっごくやりすぎなんです。本当、沁みて痛くて泣きたいくらいだから。もういいから、もういいからですからッッ!!!

「・・・ねぇ、なりさん。」
「なんだ。」
「・・・・・・わざと?」
「・・・貴様…我を侮辱しているつもりか?」
「いえ。」

即答して否定する。何時までも消毒液をつけているのを尋ねたら 物凄い勢いで ギラッ と睨まれたので、冷や汗をかいて謝るしかできなかった。・・・うん、こーいうのは ヘタレ って言うんだね。うん・・・・・・。
何時まで経ってもこのままではいけないので、なんとなく なりさんに 包帯を巻くか判創膏を貼るか を促して見た。そしたら なりさんは包帯を巻いてくれた。
そんなに怪我はしてないんだが と思ったが、彼の好意に甘えて、包帯を巻いてもらう事にした。大怪我をしたかどうか心配させなければいいのだが…。(それは自己陶酔と言うか自己誇大というか誇大妄想と言うか。まぁ 甘えから来ている考えだから、そんなに深く考える必要はないか。)
あ、そう言えば 彼に“判創膏”と言うものを 教えたっけ?

[*back][next#]

11/18ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!