[携帯モード] [URL送信]
92. もやもや
裏道を出ると、大通りに出た。道行く人は 裏道から出てきた私達に気にしもしない。私は政宗さんとチカさんに出るように言って合図した。チカさんと政宗さんが裏道から出てきた。チカさんと政宗さんの頭に埃とかが付いていたのでなんとかとる。とったら政宗さんが私の頭を払った。チカさんが私の肩を払った。埃が上から落ちて見えた。
とりあえず目的の物件とそこまで行く建物の目印を探して人ごみの中を歩く。二人とはぐれない為に何時の間にか手を握っていた。二人は何も言わず 私に握らせてくれたままだった。二人は辺りを見回してたけど、私は構わず建物に向かう為の目印を探し、左へ右へと歩く。

くすくす
こしょこしょ

私の嫌う視線と言葉が耳に入り、パッと二人の手を放す。しかし、二人はぎゅっと私の手を握り返した。

「足が止まってるぜ。」
「なあ、次はどっちへ向かやあ いいんだ?」

政宗さんとチカさんが視線を未だ外に向けたまま、私に問う。私はチカさんと政宗さんに向かう場所を知らせて足を進む。
くすくすごにゃごにゃこしょこしょ あぁ嫌だ。この視線と雰囲気だけは嫌だ、嫌だ。
自然と視線が下へ俯く。一体何を喋っているのか分からない。だけどこの視線は嫌だ。なめるような視線は嫌だ。馬鹿にするような、嘲るような。

「大丈夫か?」

チカさんが声を掛ける。私は 大丈夫です、と言って目的の場所へ向かう。デパートだが、この調子じゃ・・・ちょっと。大通りでこれだ。デパートでは もう少しマシになってくれればいいが・・・。
なめるような視線はまだ続く。政宗さんとチカさんは気にしてないかな。気にしてなければいいが・・・ くすくすごしゃごしゃ まだ聞こえる。嫌でも聞こえるんだよな、地獄耳。

「しゃきっとしろ。」

政宗さんが私の手を引っ張って上を向かせる。

「・・・私、変じゃないですよね?」
「あぁ?」

政宗さんが苛立ったように答える。

「私の姿、少なくとも 変じゃないですよね?」
「・・・。」

政宗さんがぐるっと辺りを見回す。

「少なくとも、変じゃねぇぜ。」

視線を横へ向けたチカさんがそう答えた。
行き交う人と比べて 私の服装が変でないと思ってくれたんなら、比べものにならない位、よいことであるが・・・

くすくす ごしょごしょ

この視線、どうにかならないのだろうか。

「政宗さん、チカさん。」
「What?」
「あ?」

二人がちょっと行儀の悪い声で答える。

「ダッシュで。早足で抜けましょ。私からのお願い。」
「ハッ。真っ白の頼みとなりゃ、断れねぇな。」
「あの建物だろ?はっ。場所さえ分かりゃぁ こっちのもんよ。」
「え。二人とも、何言ってんの?ただ、早足ダッシュで抜けようと・・・うわッ!!」

言い終わらぬ内に政宗さんが私を横抱きにした。膝小僧裏と横腹に軽い衝撃が加えられる。だが、腹部の傷には何の支障もない。痛みはこの衝撃と比べると、どうって事はない。あ、靴が脱げる。何時の間にかチカさんが私の靴を拾って視界から消えていた。視界は流れるように早く動いていた。


政宗さんとチカさんが人ごみの中を まるで魚が流水の流れを受けて泳ぐように、すいすいとさけて泳いでいった。

[*前へ][次へ#]

95/122ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!