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83.
「じゃぁ、こじゅさんは そちらの方をお願いします。」
「おう。・・・って何外そうとしてんだ、手前ぇは。」
「え。手伝った方が早いかなぁ、って思って・・・後 水さわって蒸れるし。」
「だからってソイツがやった好意を無駄にするんじゃねぇ。後、幸村の野郎と一緒にしてんじゃねぇだろぉなぁ?」
「(こ、これは政宗さんの言っていた極殺モード、に近い状態ッ!!)い いえ。」
「ったく・・・猿飛の奴が折角巻いてやったんだ。お前は横で指導しろ。」
「あ、うん・・・あ。カレールー。」
「かれぇるぅ?」
「えぇ。献立に困ったお母さんのヒーロー カレーです!何か困った時はこれに頼るのが一番ッ!これで一日三食くらい しのげます。」
「栄養が偏るじゃねぇか。」
「その間に野菜が溶けるので大丈夫です。」
「おい。」

そう言えば 野菜溶けるなら他のはどうなるんだろ、って考えた時期があったなぁ。と思いながら、こじゅさんが野菜切っている傍ら 大きな鍋を取り出して水を汲む。

「便利だな。」
「この蛇口をきゅっと捻れば・・」
「おう、それは昨日やったから分かってるぜ。」

と言って、また私の髪をくしゃりと撫でた。あ、水の中にゴミが入ったような。鍋の中に溜めた水を全て捨て、また新しいのを入れる。

「何勿体無ぇ事をしている・・・」
「いえ、ゴミが入ったようなものですから・・・。」
「・・・・・余り、無駄にすんじゃねぇぞ。」
「ん。」

こじゅさんは私の頭から手を放し、アルミの洗面器に溜めた水で軽くその手を洗った。 ん、気付いてくれてたみたいだな。余り ゴミとか入った料理を食べたくないのが事実だし。
一区切りして 鍋に水を入れ終え、コンロに持っていき、火をかける。一瞬ズキッとしたので 昨夜佐助さんに巻かれた両の手の包帯を じっと見る。

「どうした、痛ぇか?」
「いえ、ただズキッとしただけです。」

こじゅさんの問いにそう返した。
水はまだ沸騰してない。冷蔵庫の中を軽く確認する。紅ショウガはやはり切れていた。
コンロに戻って、水が沸騰してない事を確かめてから、こじゅさんが切った野菜の量を見る。明らかに多い。多すぎる。私は ふと思い出して肉が無いかどうか確かめる。肉はある。しかし、私と幸村さんの分を合わせて買ったのしか無い。ひき肉だ。カレーやシチューと言った煮込み料理には肉の角切りが通だ。しかしひき肉はどうだ。駄目だ。散り散りになって肉の名残も残さない。
ひき肉でミートボールを作ろうとしたが、台所の調理する場所は こじゅさんと こじゅさんの切った野菜で占領されている。仕方が無い。また今度だ。私はそっとひき肉の入ったパックを冷蔵庫に戻した。なんだ、つまり 今日は肉無しカレーか!野菜カレーかッ!!!

・・・。

「こじゅさん、これも入れよう。」
「あぁ?ほうれん草じゃねぇか。」
「えぇ。野菜カレーなら、いっその事、全部緑色にしちゃいましょう、味なんて 皆煮込めば一緒です。」
「料理人が言っちゃならねぇ事を言ったな・・・」
「いいえ。だって 私、主婦ですから。」
「? 夫がいるのか?」
「 いいえ。」

いませんね、今は私の独り暮らしですね。幸村さんや皆さんを除くと。 ふとその事実に気付き、悲しくもさびしくも感じたが、それを 頭を振りかぶって 振り払うと、不思議とその気持ちのもやもやは消えた。しかし、その発源は消えない。

不意に、こじゅさんが私の頭を くしゃくしゃと撫でた。こじゅさんは全ての野菜を切り終えていた。


こじゅさんはオトン的な立場。真っ白ちゃんの しゅんとした時に頭を撫でてくれる存在

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あきゅろす。
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