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7.存在が消えた、それこそが恐ろしい
彼がコップに入れたお茶を全部飲み干したのを見計らって、話を切り出す。

「さて・・・まず、そちらの話を聞かせて貰いましょう。
・・・かと言って、そちらの事情をべらべらと喋って貰うわけではありません。貴方の『疑問』に思った『質問』を、私が答えさせて貰います。」
「・・・・・・それは、つまり・・・某の質問に、貴殿が答える、と言う事でござるか?」
「はい、そうございます。」

あ、口調が移った。

「そうでござるか・・・。」
「あぁ、名乗り忘れましたが、私、真っ白と申します。」
「真っ白殿、か・・・。某、真田幸村と申す。」
「真田、幸村・・・です、か。」

彼の名前を呟く。
真田幸村、ゲームや漫画でキャラクターとして取り上げられる名前であり、歴史上の人物である。
真田幸村には十人衆と言う、十人の側近がついており、その内の一人に、猿飛佐助と言う忍者がいる。
・・・忍者ハットリ君が脳裏を通り過ぎていったが、今後無視しとこう。
そして、幼少を、彼の幼時・・・あぁ、織田信長だ。確か、織田信長?だっけなが、彼の両親殺して国乗っ取って今後危険だから山奥に閉じ込められたと言ってたような・・・あぁ、もしかしたら織田信長じゃなくて徳永かも、あ、家康?徳光?いや、違うな。えーっと、あ。徳川だ。徳川将軍。そして開国間近で弱腰になった将軍。
もしかしたら・・・と言う話の仮定は隅に置いとく。彼の話を聞かなければ。

「じゃぁ、真田・・・さん。貴方、何か質問はありませんか?」
「うぅむ・・・・・・。」

真田さん――とりあえず今はそう呼んでおこう――に質問を投げかけると、彼は腕を組んで目を瞑り、顔を下に俯かせて一生懸命何かを考えた。
そしてうんうん唸った後、一つの質問を出した。


「ここは、何処でござろうか?」

見慣れぬ物が沢山あるし、某のいた所とは全く違うでござる。なにより、なんと言うか・・・゛空気゛、が違うでござる。

と、彼は言った。
なるほど、なるほど。


「では、一体どのように違うんですか?」

と、彼に質問を投げかけてみた。
彼は辺りを見回して、そしてうんうん唸って悩んで、また周りを見渡して、またうんうん唸って。
これでは切りが無い。いや、彼自身、どの違いが何が違っていてどのように自分の世界と如何に違うか、って言う説明が出来ないのかもしれない。

これは一度、見せた方がいいのかもしれない。

もしかしたらショックを受けるのかもしれない。しかし、実物を見た方が、質問もてっとり早く、いや、自然と次々と出てくるだろう。
何しろ、゛自分の元いた世界とは丸っきり違う゛のだから。

私は真田さんの手をひっぱり、窓際に引き寄せる。
真田さんはクエスチョンマークを沢山出して、私を注視する。


「真田さん、今から目にするものを教えてください。
そして、疑問に感じた事を私にぶつけて下さい。」
「?わ、分かったでござる。」

真田さんは何が何だか分からない様子で私を見る。

願わくば、彼が壊れんことを。

心の中で、ありもしないかもしれない神にそう祈って、私は真田さんに窓の向こうに見せる゛夜景゛を見せた。

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