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67. 買い物組み
「旦那、その すーぱー って言うのは、どうやってすれば行けるの?」
「おう、確か・・・橙色の片手を上げた象の像を右手に曲がって、さらにそこを赤い文字のタバコ屋の看板が見えるまで真っ直ぐ行ってそこを・・・?」
「あー、うん。旦那、とりあえず真っ直ぐ行こう。真っ直ぐ行って、何時も曲がる場所に来たら俺様に教えて。で、どこ曲がるか教えて。」
「おう!任せておけ!!」

幸村は佐助に元気よく返事を返す。
佐助は笑ってそれを返す。

「それにしても、色々とあるんだねー、真っ白ちゃんのお家って。旦那、真っ白ちゃんに家族はいんの?」
「さぁ・・・某は知らないでござるな。ただ、世話になった“団”がある とは聞いておるが・・・。」
「ふーん、そっか。」

佐助は自分が今来ている服の裾を掴む。

「留め糸全部外したら、俺様にピッタリー。」
「佐助、何をしておるか?」
「いいや、只、なぁんで男物の着物を持ってたのかなぁ、って 思っちゃって、さ。」
「・・・某が聞いたところだと、仕事服、だとおっしゃっていたぞ。・・・佐助、此処を右に曲がるぞ。」
「あぁ、確かに橙色の象の像だね・・・。仕事?これ掛けるのも、仕事の内?」

佐助は掛けた眼鏡を上へ上げ、幸村に尋ねる。
真っ白から受け取ったワックスで佐助の髪は元の状態を維持している。

「さぁ・・・多分、そうであろうな。人との交流を主に扱う仕事をされておるからな…。」
「人との交流?商人かい?」
「いいや、違うであろうな・・・。商人のような素振りをしなかったし・・・あくまで、俺達の価値観では、な。」

幸村はそう言って、首を振った。
佐助は そっか、と言ってその会話を終えた。

佐助は真っ白から借りた着物の裾を見ながら、真っ白が 糸を取り終えて着物に腕を通した自分を見て放った一言を思い出す。

『あぁ ピッタシなんだ。』

あの時、真っ白が言った一言は何なんだろう。あの時、真っ白の腹の治療をする時に見えた、鈍色に光る輪は、何だったんだろう、首に掛けてあった鎖は何だったのであろうか、と考えながらスーパーへ向かう。
だが、関係無い事だ。今は彼女の好意に甘えて旦那と一緒に元に帰る方法を考えよう。まぁ、いきなり神隠しに遭ったようなもんだ。簡単には いかないとは思うが。 敵は少ない方がいい。このまま、彼女が彼らを引きとめてくれれば 武田軍の上洛も 楽にはなるだろう。

「佐助、一体何の食材を買うのだ?」

幸村の一言に佐助は我に帰る。

「そう、だねぇ・・・。真っ白ちゃん、すっげー血流してたから、とにかく鉄分のあるもんだね。ほうれん草とか小松菜とか、かな。しっかし、この時節にあるもんかねぇ・・・。」
「あるでござるよ!大抵のスーパーには何でも売ってる、と 真っ白殿は言ってたぞ!!」
「はいはい、真っ白殿、ねぇ。」

幸村が、敬愛しているお館様と呼ぶ時と同じ響きを持つ"真っ白殿"と言う言葉に対して、佐助は不安を抱く。これが、旦那の足枷とならなきゃいいんだけどな。

「旦那。」
「何だ?」
「大将と真っ白ちゃん、どちらか一人を選べないとしたら、旦那は一体どっちをとる?」
「・・・。」
「旦那、二人同時とか 旦那が犠牲になるとか 俺がもう一方を助けるとか 無しね。」
「・・・」
「・・・今度、答えを聞くわ。」

すぐに答えなかった幸村に佐助は軽く笑って、幸村にそう言った。幸村は小さく「すまないでござる・・・」と謝り、しばらく口を閉ざした。

そう、それでいい。佐助は心の中で呟く。
そうやって 悩めばいい。旦那、あんたは戦将で 彼女は一般人だ。・・・いや、一般人 か?
しかし、旦那。俺達にとっては大将があの子よりも遥かに大事だ。だけど 旦那がそう悩んでいるのは、もっと 別の理由から、だろう?

俺様だってどちらかと問われれば、一瞬迷ってしまうけど、 俺はすかさず大将をとらせてもらうよ、旦那。


戦に恋路とかいらない

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あきゅろす。
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