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6.おはなし、おはなし
さて。十分経過。
手軽焼うどんが出来ました。
昨日の残り物の紅ショウガがあったので、ついでに焼うどんの上に全部乗せました。残り少なかったし。
ぶっちゃけ十分経過している気は無いが、まあ そこはノリだ。この本の受け売りだ、影響。
『十分でおいしいごはん!』
・・・本当、メニューの決まってない時には助かる。

お盆の上に三人前の焼うどんと水の入ったガラスのコップを置く。

・・・そう言えば、お茶。出し忘れたな・・・・・・。

冷蔵庫を開ける。おぉ、麦茶があった。来客用の。
ガラスのコップを棚から取り出し、ボトルに入った麦茶を注ぐ。あ、残りがあった。仕方がない。このまま彼の胃袋の中に入ってくれ。
まだ中身のあるボトルもお盆の上に乗せ、客間へと第二の食事を運ぶ。

客間に入ると、赤い人物は興味深そうに辺りを見回していた。
しかし、見回すだけで何も触ってはいない。


・・・たすかった。


中には下手に触られると困るものがある。ぶっ壊れる可能性のあるものがあるのだ。
好奇心に任せて所構わず触ってもらわなくて良かった・・・。人の事言えないが。

とりあえず、彼に食事の出来た事を知らそうか、と思ったら気づかれた。そしてキラキラと目を輝かせてお盆の上に乗せられた焼うどんを注目した。
涎つきと言うオプションが危うくつきそうになった程に。

「できたよ。」

と一言そう言って焼うどんを彼の前に置く。
キラキラと目を輝かせるが、焼うどんの上に置かれた紅ショウガを怪訝そうに見て、指で掴みあげた。あぁ、箸を使えよ、箸を。

「すまぬが・・・これは、何でござるか?」
「あぁ、紅ショウガだよ。なんだったら食べなくていいけど・・・。」

と私はそう言い濁して、紅ショウガを一口指で掴み上げて口に入れて咀嚼する。
彼は私の行動を見ている。
ごくん、と噛んだ紅ショウガを飲み込んで両手を広げて自分の無事を知らせる。

「この通り毒は入ってないし、普通の食べ物だよ。それに言っとくけど、私が毒を入れる場合は苦しまないように即効性の毒を入れるからね。」

まぁ依頼人がその苦しむ様子を見たいと願う場合は別だけど。だが私は見たくはない。なんと言うか・・・こわい。いや、おぞましい、かな。

「そ、そうでござるか・・・。」
「うん。」

そうやり取りを終えて、彼は箸で紅ショウガを摘みあげた。暫く間が空いて、彼はぱくっとそれを口に入れた。
咀嚼してからやがて、「すっぱいでござる・・・」と呟いた。

「そりゃぁ、紅ショウガとはそう言うものだからね。」
「なんですっぱいんでござるか?」
「え・・・そりゃぁ・・・・・・まぁ、ん。そう言うものだからね。味の付け合わせにもなるからね。」
「付け合わせ?」
「ん、カレーとかの。」
「かれぇ?かれぇとは、何でござるか?」
「あーっと、・・・今度作るよ、今度。」
「今度でござるか?!!」
「あぁ、うん。今度・・・・・・・・・そうだ。」

目を輝かせてカレーを期待している彼の言葉でふと気がついて本題を思いだした。
あぁ、この本題を思い出さないと、先が進めないではないか。


「食べ終えたら、話を聞いて欲しいんです。貴方にとって、とても重要な。」

「・・・・分かったでござる。」


急に居住まいを正した私に事の重要さを感じたのらしく、神妙な面で了承の返事をした。

しかし焼うどんを食べる彼の姿は、先程の神妙な面の欠片もなかった。



(さて、どう、説明しようか)

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