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44.むし/る/し
午後の予定は確か・・・あぁ、入ってたな。
この日は幸村さんには寝室でひっそりとしてもらわなければ。お客さんがいらぬ迷惑をかけたら・・・堪らん。滅茶苦茶酷いことになる。面倒くさいことになる。
時間はまだ、ある。今のうちに買い物に出かけるか。とりあえず、幸村さんの暇をつぶせるものでも。静かに遊べるものを。

「真っ白殿、いかがした?」
「ちょっと出かけてくる。」
「! 某も付き添おうか?!!!?」
「いや、いい。早く済ます。それに、現チャリで行くから。」
「げんちゃり・・・?」
「家の前に置いてあるバイクの事。」

そう言って、必要最低の物を持って 外に出る。
誰か来ても出てはならないよ と言うことを伝えると、幸村さんは 了解した! と答えた。なんだか御伽噺みたいだ。赤頭巾ちゃんの出だし。

そう思いながら扉を閉める。玄関の棚の上にこっそりと置いたホワイトボートを出し 立てかけて『外出中』と書いといた。
急いで階段を駆け下りて下の階に行き着く。と言っても地面に足を着いただけだが。一階は空き家だ。いざとなったら そこを使わせてもらおう。
下に置いてある原付を引き出して、エンジンを掛ける。時速五十キロで近所のコンビニに向かった。むじる/し商品は、安い。


買ってきたのはクレヨンと大きな白い紙の落書き帳。思いの外高かった。費用が出た。
そんなことはどうでもいい。ちらりと携帯を開いて時計を見て、時間を確かめる。間に合うか。いや、間に合う。
どたどたと階段を上がって鍵の掛かってないドアを開ける。防犯対策?大丈夫です 幸村さんには 普通の一般常識の方は勝手に部屋入らないから、私がいない時に私以外の人が来たら殴っていいよ。 と言ったから大丈夫なのです。万一他の・・・アレ系の人であったとしても大丈夫 寧ろ逆に すっきり する時があるから。

扉を開けると、幸村さんは本を開いていた。と言っても、パラパラと見ていたのであろう。パラパラと音がしたし、現に彼の開いているそれは、『心理学百書』生半可な人間が見ても、理解は半分しかできない。
とりあえず幸村さんに説明することから始める。

「あのね、幸村さん。今からお客さんが来るの。」
「お客さん、でござるか?某も何か もてなしをした方がいいだろうか・・・ 」
「いや、いい。逆に悪い場合もある。」
「 悪い、?」

幸村さんが くしゃ っと 泣きそうに顔を歪める。

「いや、そう言うことじゃない。ちょっと、お客さんが特殊な方で。」
「 とく、しゅ?」
「うん、そう。だから、幸村さんが大抵静かにして欲しい時には、そう言う系のお客さんが来るから。」
「・・・来る?」
「うん。そう。」
「某が、真っ白殿の仕事の邪魔をしているのであろうか?」
「いや、違う。普段は邪魔になってない。だけど、ほとんどが、その  神経質な人だから。」
「・・・。」
「幸村さん、小さい頃、『静かになさい』って 言われなかった?」
「・・・。」
「ちょっと、今はそれをして欲しい。や、してるのは一時間か、長くて二時間・・・早くて三十分だから。それまで 我慢できるよね?」
「  ・・・ できる。」
「・・・ん、ごめんね。私もあちらも、大事な事だから。」

私は 俯く幸村さんの頭を撫でる。なんだか、彼に申し訳ない気がしたからだ。

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