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43.深紅の箸
食卓にパスタとサラダ、真ん中にボールを置いて着席。次に幸村さんが持ってきてくれたグラスとお茶をそれぞれ置いて、着席。
私達の前には、それぞれ パスタとサラダが目の前にある。
・・・え?ねこまんまじゃなかったのかって?予定変更だよ。作るのが面倒くさくなった。メニュー統一した。
とりあえず手を合わせる。幸村さんも私に合わせて手を合わせる。

「いただきます。」
「い、いただきます。」

幸村さんがワンテンポ遅れて合掌する。

「真っ白殿、真っ白殿。」
「ん、なに?」
「真っ白殿のところでは、合掌する時、親指に箸を乗せてするのでござるか?」
「・・・・・・ 家でする時だけです。お外の時はちゃんと 手を合わすだけですよ?」

幸村さんの言ったことが大体わかって、そう返す。

まず最初に 互いの席に置いた卵の殻を割る。幸村さんもそれに続いて割る。(といっても私の真似をするように だが)
こんこん と叩いて殻を外す。柔らかい白身が出てきた。お、いい感じにできたみたいだな。幸村さんが手元の卵を見て驚く。パカッと2つに割り、片方を用意したボールの方へ入れる。幸村さんもそれに続いて入れる。幸村さんの手から卵が零れ落ちそうになる。

「幸村さん、このように 持ってください。」
「りょ、了解したでござる。」

不慣れな手つきで 幸村さんは卵を垂直に持ち直した。
次に現れた中身を水菜のサラダの上に落とす。卵が重力に従って形を崩していく。幸村さんは目を輝かせて 自分の器の中に落ちる卵の様子を見た。
まずサラダを一口含み、咀嚼する。・・・うん、まぁ いい感じだ。
幸村さんも私に習ってサラダを口に含む。

・・・。

パスタに手を付ける。右手にフォークを構え、左手にスプーンを構える。幸村さんも私に習う。
フォークでパスタを絡め、スプーンの底でパスタを更に丸める。幸村さんもそれに習う。
丸まったパスタを口に含む。幸村さんも含む。だが、口の端からパスタが零れた。

「幸村さん、好きに食べていいですよ。」
「むっ・・・!ならば、箸をお願いできるであろうか・・・・・・。」
「えぇ。でも、そんな食べ方もある、と言うことだけでも知っていてくださいね。」
「・・・。」

幸村さんは黙ってパスタを丸めたフォークを口に咥えたまま モグモグと口を動かした。
・・・あぁ、拗ねることもあるんだ、この人。
ほんの少し笑って 箸を取りに行く。今度替えの買おう。幸村さんに赤い箸を渡す。「かたじけないでござる・・・」と言って彼は受け取る。
彼は気づいているだろうか。深紅の色に。

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