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42.パスタ!
包丁が天井へ突き刺さった。

「も、ももももも・・・申し訳ないでござるぅぅぅうぅううぅううう!!!!!」
「や、いいから・・・。とりあえず手、洗おう。ほら、上がって上がって、立ちあがって。」
「うぅぅ・・・。」

顔を真っ赤にしながら土下座して謝る幸村さんを立ちあがらせてティッシュを手渡す。「申し訳ないでござる・・・ 」と呟いて幸村さんは鼻を噛んだ。

「ほら、ここも。」
「うぅ  」

なんか、こうして見ると 幸村さんって、泣き虫だな。
私はティッシュで幸村さんの涙を拭いながら そう思った。
幸村さんに手を洗うように言ってから、台所の状況を見渡す。手を洗い終えた幸村さんに 私が持っていた包丁を渡す。

「?」
「幸村さんは、これで水菜を切ってください。」

と幸村さんに水菜を頼んでから私も手を洗った。


水菜が順調に ざる の中へ積み上がってく。まぁ、幸村さんの二人前として作っているから、多くなるのは当たり前か。ぐつぐつ煮えるお湯の中で泳ぐパスタをかき回しながらそう思う。大抵一人で作っているときは時間を計って他の作業をするのだが、包丁一本突き刺さっている為に鍋を見ている。

・・・。

「幸村さん、」
「? なんでござろうか。」
「槍の雨が降ってきた経験、ってありますか?またはそれに似た状況。」
「うぅむ・・・・・・ ! ザビー城でなら似たような経験をしたことがあるッ!!!!」
「そうですか。」

じゃぁ、それなら大丈夫だ。天井に突き刺さった包丁が万が一落ちても。

「どんなのだったんですか?」
「針山が天井から落ちてきたでござるッッ!!!!」
「・・・それが一回きり?」
「いや。何回もあったでござる。隙間を潜り抜けて層を駆けたが・・・そう言えば、何やら奇妙な人形が走り出て爆破したのもあったな・・・・・・。」

どんなアトラクションだ、どんな。だけど一回行ってみたいな、そのザビー城。
私は へぇ と答えて会話を打ち切った。パスタが茹であがる。
用意した大きめの ざるを流しに置き、そこに茹であがったパスタを流す。湯気がバーッと出る。

「真っ白殿、某は 次は何をすれば・・・。」
「あぁ、そこの肉を切っといて。この位の幅に。」

と、指で隙間を作って切る幅を教える。幸村さんは「了承した」と言ってベーコンを一口大に切った。
水で軽く洗ったパスタの入ったざるを横に退けて、軽く鍋を洗う。と言っても水で洗うだけだが。
また鍋に水を張ってコンロに火をかける。強火から中火の中間みたいな強さで。
ベーコンを切り終えた幸村さんに役割チェンジを伝える。

「幸村さん。」
「なんでござろうか。」
「次はあっちの鍋見てて。丁度・・・温泉みたいな熱さになったら卵二つ入れて。出しとくから。それで温泉以上の熱さになったら水を入れて温度を調節して。お湯がそれ以上になったら少し捨てていいから。」
「・・・お湯を温泉みたいな熱さにしつつ、鍋から噴き出そうだったら捨てる、と・・・?」
「うん、流しにね。」

幸村さんの目が この前教えたゴミ箱に行ってたので、お湯は流しに と訂正した。

温泉卵を幸村さんにまかせて、パパッと残る食材を準備する。一旦包丁とまな板を軽く水で流して水気を切り、にんにくを縦半分に、エリンギを薄く一口大にスライスする。次に冷蔵庫からまだ出してない食材――生もの ぬるくなったら危険――を取り出して台の上に乗せる。フライパンを取り出して火にかけて熱する。
その間にミニトマトを横三等分縦1.5cmに切る。
フライパンから煙が出始める。オリーブオイルを取り出して引き、じゅわぁ とフライパン全体に伸ばす。切ったにんにく、エリンギ、幸村さんに切って貰ったベーコンを入れて炒める。ベーコンが程良い感じに炒め始まったら 火の粉を弱くしてざるに乗せたパスタの水を切り、幸村さんにかからないよう フライパンにパスタを入れ、再度炒める。ベーコンがいい感じにカリカリしてきた。
パスタの具合を見て、オリーブ油を軽く加えた。幸村さんの様子を見る。

「卵、どうですか?」
「入れたでござる。」
「・・・塩は?」
「え。」
「・・・とりあえず入れといて下さい。」

慌てた幸村さんに塩を手渡す。幸村さんは焦って塩の瓶を何度も振って入れた。とりあえず、二三度振るだけでいいと言うことを伝えといた。
全体に油が加わったようなので、切ったミニトマトを加える。軽く箸を回して全体に火を通しながら、塩・胡椒を適量に入れる。
もうそろそろいいな、と思って火を切る。はい、パスタの出来上がり。とりあえずフタしとこう、フタ。
幸村さんの様子を見る。

「卵の調子、どうですか?」
「ぷかぷかと浮いてきているでござる。」
「あ、じゃあ火、切ってください。あ、やり方分かります?」
「・・・分からんでござる。」

そう言った幸村さんに少し離れるように言い、コンロの火を止める。

「じゃぁ、でかい皿と丸い容器を取り出して下さい。二人分。」
「了解したでござる!!」

そう言って幸村さんは食器棚へ向かい、皿を取り出し始めた。・・皿の説明はこの前したから大丈夫だ、うん、大丈夫なはず、だ。

幸村さんが皿を出している間に、事前に用意した 洗ったボールにオリーブオイル、バルサミコソースに塩・胡椒を加えて混ぜ、ドレッシングを作った。
幸村さんの支度が終える。

「じゃぁ、盛り付けしましょう。幸村さん、丸い方、お願いします。」
「御意!」

そう言って幸村さんが丸い容器を一つ手渡す。
それに水菜を盛り付ける。

「あ、もう一つお願いします。」
「御意!」

ドレッシングをかけて軽く回しながら幸村さんに言う。幸村さんは 御意 と言って空いた皿を取り出す。

「あぁ、丸い方でお願いします。」
「! す、すまないでござるッ!!!」

そう言って幸村さんは慌てて丸い方の皿を取り出す。
それを笑って流して、持った皿を幸村さんに渡して空いた方を貰う。幸村さんはそれを机の上に置く。

「卵、割れないように鍋から水を出して 取り出してくれませんか?」
「了解したでござる!」

幸村さんはそう言って 鍋をコンロから流しへと移して慎重にお湯を流し始めた。
彼がそうしている間に私は残りの皿を台の上へ移し、パスタを乗せた。幸村さんのは上手く山になるよう 二人前を盛り付け、私のはレストランに出るパスタのようになるように盛り付けた。

幸村さんは卵二つを両手に 丁寧に乗せ、私を待っていた。
私はその様子になんだか可愛らしくも可笑しくも感じて、ついくすくす笑ってしまった。
幸村さんが どうかしたでござるか? と尋ねる。なんだか子犬みたいに思ったが、いえ なんでもないですよ と答えた。
卵を両手に持つ幸村さんに代わり、ドレッシングを作ったボールを軽く水で洗い、パスタの皿を二つ持つ。
幸村さんが慌てて何か持とうかと尋ねる。 ならば、アレをお願いします。 と言って、水菜の入った皿を指した。卵をどうしようかと悩む顔が見えた。
とりあえず卵をボールの中に入れて、サラダを持ってきてもらう事にした。くそ、中々バランス、大変だな・・・!ボールの。


無事食卓につき(と言っても、客間の机だが)、パスタとサラダを並べる。卵はもう少し後のお楽しみにとっておこう。サラダを並び終えた幸村さんにグラス二人分を頼み、フォークとスプーン、お茶の入った瓶を取り出す。水でもいいが、無い。今度瓶のジュースでも買ってきて飲もう。そしてそれを水用にしよう。

そんなこんなで昼食を食べ始めた。

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