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39.よいこはねる時間
目頭を押さえる。時計を見る。あぁ、くそ。一日が二十四時間あればいいのに。一日に二十四時間プラスな意味で。
この前幸村さんが徹夜してる私に気づいて色々と気遣ってくれたが、そんなことよりも自分のことを気にしてくれ。貴方は初めての場所にいるんだから。
と言って幸村さんを何とか寝させることに成功しようとしたが、嫌だ嫌だと言って、私が仕事を終えるまで客間のソファで待ってると言いだした。
まぁ途中で眠るだろぉなぁ、と思ってその案を受け入れたが、なんと幸村さん、夜の二時まで起きていた。まぁ凄い。これは何としても寝かせねば。

「幸村さん、幸村さん。」
「何でござろうか。」

幸村さんは私が淹れたコーヒーをがぶ飲みして目がギンギンの状態だが、表情からしてめっちゃ眠気と闘ってる。

「今この時間帯は丑三つ刻と言って、幽霊が出る時間なんですよ。一番安全なのが寝室ですよ、って・・・自分で言っててなんか怖くなってきちゃったよ、どうしようよ、幸村さん。」
「真っ白殿!!自爆してるでござるよ?!!?!!」
「うん、なんでそんな単語を知っているのかが気になふぅよ、わらし。」
「真っ白殿、呂律が回ってないでござる。それは先程真っ白殿からお借りした『現代カタカナ辞典』とやらを読んだおかげである。」
「またひろつあらたなとりひあがうまれたね。」
「真っ白殿、何を言っているか分からんでござる。」
「そういう君こそまだ眠らないのかね。」
「真っ白殿、某のことを"君"と呼ぶのは止めてくだされ。真っ白殿の今行っていることを全力で邪魔するでござるよ。」
「やめてくれ。」

切実に。

「と言うよりも真っ白殿、何をしているでござるか?」
「仕事。」
「そのような箱のものでか?」
「うん、そう。だけど触らないでね。壊れるから。」
「・・・。」

自分用のコーヒーを飲む。エスプレッソ苦い。けどそこがいい。

「真っ白殿、疲れてるでござる。」
「うん、だけどこれを終わらすまで私、眠れない。」
「某、いい安眠法を知っているでござる。」
「うん、そうなの。」
「子守唄でござる。」
「うん、頼むから今それを歌わないでね。」
「小さいころよく歌ってもらったでござる。」
「うん、それは非常に興味あるけど頼むから今は歌わんでくれ。途切れる。これがもう少しで終わりそうなんだ。」
「ならば待つでござる。」

と、幸村さんが至極嬉しそうな顔をして私を待った。
うん、こことこことこことこことこことあれとこれとをこうしてあぁしてこうしてくどくどくどくど

「真っ白殿、まだでござるか?」
「後もう少し。」
「あの時計の短い針、二から三に移ったでござる。」

幸村さんの言葉に反応して、チラリと壁に掛かる時計を見る。もう三時か。

「寝ていいよ。」
「真っ白殿が寝るまで寝ないでござる。」
「体壊すよ。」
「真っ白殿はどうでござるか。」
「何が。」
「某が体を壊すと言うのなら真っ白殿はどうでござろうか。真っ白も体を壊すであろう。」

と言って、幸村さんが私の顔を覗きこんだ。と言っても仕事机から身を乗り出しただけだが。

「慣れるから平気だよ。」
「ほう、慣れる、とは。」
「慣れる、から平気だよ。」
「ならば、その言葉の裏を返せば真っ白殿はその時その時に体を壊すという事だな。」

私は笑う。

「幸村さん、そう言う言葉遊び 好きなの?」
「真っ白殿、某は本気でござる。」
「私、好きだよ。そう言うの。」
「・・・。」

幸村さんが黙る。
送信押してはい終了ー。やった、これでようやく仕事は終わった!

よし、寝よう。幸村さん。と私は深夜のテンションに身を任せて幸村さんのコップと自分のコップを持って流しへ向かう。幸村さんが 卑怯でござる・・・ と呟いたので、ん? と聞き返したら、幸村さんは首を横に振ってなんでもないでござる。と言った。変だなぁ。幸村さんも深夜のテンションかしら?

とりあえず確定したことは、二人とも朝は遅くなるってことだな。あぁ、眠い。もう寝るわおやすみなさ い


「真っ白殿、真っ白殿」

あぁ、幸村さんの声が聞こえる。

「いつか、いつか」

そこで声が途切れる。途端、腹部にすごい圧迫を感じた。




多分自分でも気づいてない状態のゆっきー。

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あきゅろす。
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