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38.よるのお話
今日は色々と疲れた。明日色々とする。っつーか仮眠をとる。
お風呂からあがり、白いタオルで髪を拭きながらそんなことを考える。タオルを横へ置いてもう一度冷たい水で顔を洗う。洗面所の蛇口を閉める。きゅっと音が響いた。静かだ。
あ、忘れてた。洗い場を出る前に、棚の上に置いた下を思い出す。下着は着けてるよ。何時もの癖で出る所だった。もし出たら、首括って死んでたよ、私。いや死にたいところだったかな。
下を穿いてタオルを洗い場のカゴの中に入れる。洗濯は明日の朝や・・・いや、明日は洗濯日和かな。洗わなきゃいけない服たくさんあるし・・・試着されていた服って、少し不潔な感じがするんだよな・・・・・・。あぁ、幸村さんの着てもらった浴衣は試着不可の方を買ったけどさ。(幸村さんに試着してもらった時のは見本の方。色は赤紅と違う色だったが)

さて、出ますか。とドアノブに手を掛ける所で一旦止まる。様子が おかしい?しばらくの間様子を見る。
人の気配はある、けどしない。消しているのだろうか。そこんところは分からない。だけど、いるようでいない。表情が 真剣?さぁ、知らない。
痛みだした両目に異変を感じて咄嗟に両目を塞ぐ。あぁ、危ない危ない。また出るところだった。もっと自制心を持たねば。
とりあえず ここでじたばたしても始まらない。私は扉を開けることにした。

扉を開けると幸村さんがこちらに背を向けて槍の手入れをしていた。そりゃそうか。自分の武器の手入れとなれば誰でも真剣になれる。さっきのはそう言うことか。幸村さんは自分の布団の上で黙々と槍の手入れをしていたので私は机の方へ行き、本棚から家計簿を取り出して今日の出費を書いた。

「真っ白殿?」

私と幸村さんの距離は近い。幸村さんの布団の横に机。だけど人一人分座れる位のスペースがある。幸村さんが私が家計簿を取り出して座布団に座った時に話しかけた。おぉ、さっき槍の手入れしてた時と雰囲気が違う。

「ん、何?」

私は横に置かれたクッションを引き寄せて抱いた。クッションの角の上に顎を乗せて机の上に置いたペンを手繰り寄せる。

「先程の袴についていた紐は、なんでござったであろうか?」

紐?・・・あぁ、肩紐のことか。

「肩紐だよ。」
「肩紐でござろうか。」
「うん。肩紐。肩に掛けるの。」
「掛けた方がよかったであろうか。」
「うぅん。あぁいうファッションもあるから。別にどっちでもいーよ。」
「ふぁっしょん?」
「ん、お洋服の流行りのこと。」
「おぉ、南蛮のか。」
「ん、そう。」

私は財布から今日と一週間分のレシトを取り出し、出費をつける。私はあまり買いだしをしない。しても食費だけだ。あぁ、燃費や光熱費、水道代もつけるけどね。

「真っ白殿、それは何であろうか。」
「かけーぼ。」
「かけーぼ?」
「家計簿。今日出たお金を書いてるの。」
「今日出たお金、か。」
「うん、今日出たお金。」
「入った分は書かないのか?」
「うーん・・・自然と入るからね。仕事代として。それ用の口座あるし。まぁ、後で即移すけど。」
「移す?こうざ?」
「蔵みたいなもの。」
「真っ白殿は蔵をいくつも持っているのか?」
「うーん・・・物質的なものじゃない。なんだろ・・・データ的なもん。」
「でぇた?」
「ん、パソコン上のもの。」
「ぱそこん?」
「幸村さんが触ったら壊れそうなもの。」
「某が触ったら壊れそうなものでござるか。」
「ん、そう。」

ページを捲る。あぁ、ヤバい。ちょっと出費押さえなきゃ。

「・・・真っ白殿は何をしてるであろうか?」
「"何"?」
「うん、そうでござる。何をしてるでござる?」
「・・・どんな、"何"?」
「一体、どのようなことをしてるでござる?」
「・・・"どのようなこと"?」
「そうでござる。」
「・・・職業的なことで?」
「そうでござる。」
「・・・何でも屋的なもの。」
「何でも屋?」
「ん、そう。」
「それは一体どういうようなものでござろうか?」

二日目のレシートを書き終える。ペンを止めて一旦考える。

「なんでも屋。」
「なんでも屋では分からんでござる。」
「なんでも屋ったら何でも屋。」
「・・・なんでもするでござるか?」
「ん、そう。だけどやりたくない仕事には手を出さない。」
「・・・それは"何でも屋"、で ござろうか?」
「   、さぁ。知らない。」

幸村さんの返事にそう返す。まぁ、自由人と言おうか。まぁ、フリーターではないが。ートではないが。やっていることはやっている。やっている仕事はちゃんとやっている。

「たまにフリーでしてるけどね。」
「ふりー?」
「 、善意で。」

さぁ、ここまでにしよう。もう寝よう。私は幸村さんにそう言って、電気を消しにかかる。
幸村さんは おやすみなさいでござる と言って布団の中に入った。私は電気を消して街灯や民家の光を頼りにして、窓に掛かるカーテンを広げた。(や、表現が変か。それにしても カーテンはいい手頃で買えた)

幸村さんが寝入ったのを確認して、私は客間へ移動する。とりあえず 仕事を終わらさなければ。

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