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29.さすけ
幸村さんがまたあのセリフを言おうとしたので、右手で幸村さんの口を押さえた。
幸村さんの唇が手のひらに当たり、幸村さんの顔が赤くなる。
頃合いを見て幸村さんの下から這い出し、蹲る幸村さんの前で正座し、彼が正常に戻るまで待つ。
にしても先程の幸村さん・・・なんか楽しそうだったなぁ・・・。なんか昔を思い出しちゃったよ、昔を。
そういや、幸村さんって、何歳だっけ?年齢聞いてないや。なんか子犬みたいで可愛いから年下かなぁと思ってため口聞いてたけど。
年上だったらヤバいなぁと思ってたら幸村さんが復活した。まだ顔赤いけど。

「・・・戻りましたか?」
「・・・一応。」

幸村さんが顔を赤らめてそっぽを向いているが気にしないでおいた。ちなみに 戻る と言う言葉、正常な意識に戻ったか、混乱を解いたか、と言う意味なので。誤解しないように。

「で、幸村さん。一体どういう時に来ちゃったんですか?」
「・・・だから上田城で稽古してた時でござる・・・。」

次は顔を俯かせて言った。まだ顔は真っ赤だ。

「その時の心情は、どのようなものでしたか?」
「心情?」
「えーっと・・・ま、気分です。その時の気分はどんなものでしたか?」
「うむ・・・・・・ただ、稽古に励んでいただけでござる。」
「ただ稽古に励んでいただけで、ありますか?」
「それだけでござる。」
「ほかに、何か・・・目的なものをやって行ったりとかは?お館様の為にぃ!とか。」
「某はいつもお館様の為に働いているでござる。」
「そ、っか・・・。」

つまり、彼は私と違って、日常の中から切り取られた、と言う事か。

「そういえば、幸村さん。」
「何でござるか?」
「幸村さん、何歳?」
「え 17でござるよ。」
「え。若い。」
「真っ白殿は何歳でござるか?」
「女性に年齢は聞いちゃいけないよ。23位。」
「23位?」
「うん、途中で数えるの、止めたから。」

周りは祝ってくれてるけど、私の姿には然程変化も見られないし。

「佐助と同じくらいでござるな。」
「あれ、佐助さんもその位なの?」
「多分。初めてあった時は、既に成人していたと思う。」
「佐助さんとは、どの位のお付き合いで?」
「某の幼少の時から。真っ白殿、佐助の話ばかりではなく、某の話をしてくだされ。」
「うん、それは追々、ね。今は他にやる事があるし。」
「やる事・・・。」
「うん、朝食。」

朝食!と幸村さんは目を輝かせて私を見た。一瞬、餌待ちの子犬を思い浮かべた。ちくしょう、可愛いなぁ!だが、彼には悪いがお預けを言い渡した。

「なッ・・・?!」
「うん、まだ朝ごはん作っている途中だったから。」

信じたくない と言う顔をした後「そうでござるか・・・」と意気消沈した。一瞬、犬耳がしょげたように見えた。ヤバイ。ちゃんと人間扱いできるかな、自分。

ペットとご主人と言うベクトルを危うく作りそうになった為、私の為にと朝ごはんを急いで作った。
ああ、彼にどの位食べるか聞いてないが、途中で立ち寄るパン屋で幾つかパンを買ってあげよう。


(痛む頭に抑えながら)

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あきゅろす。
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