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26.たまご
真っ白殿が゛当事者゛と言う言葉を使った。一体どういう事でござろうか。
確か当事者と言うのは、その事柄に直接関わった者の事を示すはず。ならば、真っ白殿は某がここに来た理由と何かしら関わっている、と言うことであろうか?
・・・分からぬ。
真っ白に渡された着物を着るか・・・。

真っ白殿に渡された着物は二着。一つは何やら奇異なもので、袖があるのが分かる。しかし、後は分からぬ。
二つ目は袴らしきものだが、長さは半分までしかない。腰のところには二本の紐がぶら下がっており、腰紐では無さそうだ。何やら奇妙な金具がいくつかあり、腰紐は見つからない。

・・・・・・分からぬ。
・・・・・・着方が全く、分からぬ。

寝室の扉を少しだけ開けて外の様子を覗く。
真っ白殿の姿が見当たらぬ。
昨夜のように部屋に押し込められないかと思いつつ、「真っ白殿・・・?」と呼んでみた。
真っ白殿は「さ、幸村さん?」と某の名前を呼んで顔を出した。
「どうしたの?」と真っ白殿は丸い鉄のものを抱えながら何かを混ぜながら某の近くまで来る。
・・・卵か。
真っ白殿が抱えた丸いものから見えた黄色いものと匂いから分かった。真っ白殿は裕福なのであろうか?

「ところで幸村さん、どうしたの?」
「へ?」

真っ白殿は卵をかき混ぜながら某の前に屈んだ。
某は服を見せて真っ白殿に服の着方が分からない事を伝えた。
真っ白殿はそれを見た後 しまった と呟いて 少し待って と言った後、向こうへ姿を見せた。
真っ白殿はどこへ消えたかを知りたくて、某は扉を開けて、部屋を出る。

昨夜と違って薄暗い。透明な枠の向こうを見る。朝日が出かけていた。
棚があった。近寄る。色んなものが入っており、触れてみようとするが、壁みたいなものがあって触れない。微かに某の顔が映った。佐助みたいな術であろうか?叩いて壊す、と言う手が思いついたが、真っ白殿が困りそうだったので止めた。
昨夜某が座ったソファとやらに座る。うむ、ふかふかしておる。そう言えば槍は寝室の方へやったな。
首を寝室へ向けると同時に机が映った。机の上には書類やら書物がたくさん積み上げられていた。
もしや、真っ白は仕事の真っ最中ではなかったのであろうか?真っ白殿にとって大切な時期で、そんな時に某が来てしまったのではないだろうか?
もしや、迷惑になってはないであろうか?と不安に思った。胸がチクリと痛んだ。

「さ・・・幸村、さん?」

真っ白殿が某の名前を呼ぶ。また言い間違えそうになったな と思いつつ、真っ白殿の方を振り向く。真っ白殿は困った顔で某を見ていた。

「えぇっと・・・幸村さん、服の着方が分からなかったんだよね?」
「そうでござる。」
「じゃぁ、とりあえずあっち、行こうか。ブラインド、上げてないし・・・。あ、いや・・・うーん・・・・・・。」

と、真っ白殿は腕を組んで考え込んでしまった。
某は昨夜外を見た透明な枠の方へ歩く。透明な枠は、何やら細い柵達で無くなっていた。
柵の一つを下げてみる。外の景色が見えた。外には何やら奇異な服装を着た人物が走りこんでおり、奇妙な鉄の塊が通った。

「真っ白殿、あれは何でござるか?!」

某は興奮を押さえられないまま真っ白殿に尋ねた。

「あー・・・うん、それは外に出てから話すね。」
「なに?!外へ出して下さるのかっ?!!」
「いや・・・そりゃそうでしょ・・・。中にいてずっと苔の生やすわけにはいかないし・・・。」

と真っ白殿は少し分からない事を言って、某を見る。そして顔を俯かせて はぁ と息を吐いた。

「・・・うん、やっぱり寝室で着替えよう。後の置き場とか説明しなきゃいけないし。」
「真っ白殿、外に出たあの鉄の塊はなにでござろうか?」
「ごめん、幸村さん。朝、弱いんだ。ちょっと今はそれ、スルー。」
「そうでござるか・・・。某のところは朝は早いでござる!よくお館様と朝の殴り合いをしたでござる!」

某の言葉を聞いた真っ白殿は顔を青くした後、「熱いご家族ね・・・」と返した。

家族、な訳ではないが、少し心があったかくなった。
お館様は某の人生の師でもあるが、なるほど。佐助は皆のおかんであるかもしれん。


(もし、そこに・・・と続きそうになった言葉は何であろうか)



真っ白=朝が弱い=幸村の朝早い発言聞いて「え?今日から早起き決定?」と顔を青くする
理由:幸村の起床時間に合わせて朝ごはんを作るため


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