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25.きがえ
幸村さんが歯磨きを終えるのを見計らって自分のも終える。蛇口を捻って水を出して歯ブラシを洗ってコップの中に入れる。手で出しっぱなしの水から掬ってうがいをする。
幸村さんが歯ブラシを咥えたまま またぼーっとしてたので、こうして下さいね。と声を掛けた。幸村さんは 分かったでござる! と元気な声を出して返事をしてくれた。・・朝から元気だなぁ・・・・・・。

幸村さんの歯磨きが終え、洗面所から出る。幸村さんが風呂場をさして ここは? と聞いてきたので、 夜と答えておいた。
幸村さんはしばらく黙った後、破廉恥でござるぅう!と叫びだそうとした。昨夜の失敗を繰り返さない為に幸村さんの頬を両手で挟んで口を塞いだ。

「真っ白殿・・・某の頬が痛いでござる・・・・・・。」
「うん。ごめん、手加減しなかったからね、いまいち手加減が分からなかったからね。」

寝室に戻って幸村さんの着れる服を探しながら幸村さんの投げかけに答える。
確か男性用のやつがあった筈・・・ビックTとして。これじゃない、幸村さんにとっては小さすぎる。確かサイズはMだった筈。幸村さんが着れる程度・・・だったはず。
お、あった。

「真っ白殿、これはどうやって着るでござるか?」
「うん、それは後で説明するわ。」

幸村さんが探すのに邪魔になって出した服を広げて尋ねた。いや、置く時は畳んだままにしたよ?!お客さんがいるしな!一人じゃないしな!

「今の真っ白殿・・・、佐助に似てたでござる。」
「あれ、そうなの?」

幸村さんの着れる上を横に畳んで置き、次に下着れるやつを探す。確か・・・カーゴでいいわ。カーゴスタイルで。紐通さないでおこう。
そういや、幸村さんにどうやって説明しようか・・・。

・・・・・・。

今までの経験上、また大声を出される可能性が高い。
横に置いた上を下と共に腕に掛けて立ち上がる。
幸村さんは座っていて私の出した服を広げて色々と観察していた。

「・・・。」
「? 真っ白殿、どうしたでござる?」

立っていた私に不思議そうに感じた幸村さんがそう尋ねる。可愛らしく小首を傾げるというオプション付きで。とりあえず幸村さんに立ち上がるように言った。
幸村さんは広げた服を持ったまま私の前に立ってくれた。

幸村さんの服装を見る。胸当てみたいなのをしている。(防具か何かか?それとも絶対領域か?)上は革ジャンみたいなものを羽織っている。素材が革と言うわけではなく、布だ。布。袖は・・・七分、か?下は袴だ。袴の着方とズボンの着方は然程変わらない。

・・・。

幸村さんの服装と装備からして、下の鎧みたいなやつは、こちらの戦国時代にあった鎧と同じ形で素材も鉄だった。(一瞬触れたが、素材は冷たく堅かった。そして色合いが微妙に違った所があった)
袴は和風、上は洋風・・・つまりは、和風の味が濃い和洋折衷の服装が多い、と言うことか。
こちらの似た時代の風潮とはえらい違いである。
もしかしたら幸村さんのところには洋風のものが混じっているのかもしれない。先程の゛政宗殿゛とやらがこちらの使った言語と同じもの――英語――を使ったのだから、外国との交流は左程あるのか?それならば鎖国か?こちらで言う徳川時代か?それとも漂流者からか?そちらの゛政宗゛様はよほど外の世界に興味があるのか・・・・・・。

・・・。

いや、そう言う風に決めるのは早計だ。もしかしたら違うのかもしれないし。そう、私がいる場所だってちが・・・

・・・・・・・・・。

いや、考えるのはやめよう、やめよう、自分。今は彼にこの着方を教えるのが先ではないだろうか。


「真っ白殿、いかがなされた?」
「ん?や、なんでもないよ。ところで幸村さん。」
「ん、なんでござるか?」
「次はこれに着替えてほしいんだ。」
「? これでは駄目でござるか?」

幸村さんは自分の着ている服を指さして言う。

「んー・・・こちらの世界でそれを着られると、色々と困るんだ。逮捕されるかもしれないし。」
「逮捕・・・。」

幸村さんの顔が青くなる。まぁ・・・最初に 牢獄に入れられる って教えちゃったからなぁ・・・。
まぁ、細かいことは後で教えよう、後で。
・・・・・・。

「だからとりあえず、これに着替えよう。ね?」
「む・・・か、かしこまったでござる・・・。」
「くっ。」

真剣な面で服を受け取る幸村さんについ笑ってしまう。幸村さんが不思議そうにこちらを見る。

「いや、ごめん、ごめん。それでね、今日は色々と必要なもの買いに出かけるから。とりあえず色々と必要になるからね、今後。」
「・・・今後、でござるか・・・・・・。」

幸村さんの顔が暗くなる。そりゃそうだ。

「うん、戻るまで、今後、ね。」
「・・・。」
「とりあえず、私も何か分かるか調べてみるよ。」
「!真でござるか!?!」

幸村さんが輝いて言う。うん、まぁ 私の事にも関わるし、ね。

「だけど、こちらではそんな事は無い。百分の百分位にあり得ない事・・・"天地が引っ繰り返ってもあり得ない"ことなんだ、これは。だから期待しないほうがいいよ。」
「・・・そうで、ござる・・・か・・・・・・。」
「うん・・・今の世界じゃぁ、科学が発達してても、神隠しや不可思議な事はまだ解説・説明できてないからね・・・。」
「でも、ま。当事者として、出来る限りの事をやらせて貰うよ。」
「・・・当事者?」

幸村さんの言葉にハッとして口を押さえる。
・・・しまった。禁句ワードだった。

幸村さんに着替えるように言ってから私は寝室を出た。
とりあえず、朝の準備をしなければ。そして休館と言う看板も掲げなければ。


(あぁ、やばい。今、すごく混乱している。)

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あきゅろす。
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