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20.気づかない
とりあえずなにかに悶えている幸村さんをそこに置いておいて、ベットへ向かう。もう疲れた。眠い。
ベットに入り、抱き枕を抱き寄せる。ぎゅっとする。人目なんか気にするか。疲れたものは疲れたんだ。
真っ白殿?と幸村さんの声がまどろむ頭の中で聞こえた。眠りに落ちて真っ暗な混濁した意識の底に沈んでいた私は眼をあける。心配そうに私を見ている幸村さんが見えた。

「あぁ・・・畳に敷いた布団に寝ていいよ。」
「真っ白殿、某、ここにお世話になってもいいんでござるか?」
「うん、いいよ。それじゃなきゃ拾わない。」
「拾う?」
「うん。幸村さん、最初、電灯の下で、寝てたから。」
「しかし某、上田城で稽古をしていた。」
「ん、でも君は電灯の下にいて、運よく君は私に見つかった。」
「真っ白殿、某は゛君゛じゃなく幸村でござる。」

強烈な睡魔で落ちる瞼を開けようとする意識の中で力強い語尾で否定する幸村さんの声が聞こえた。

「うん、でも、君は。」
「真っ白殿、君ではござらん。幸村、でござる。某は真田幸村でござる。」
「 真田、幸村。」
「ん。そうでござる。」

まどろむ意識の下で、幸村さんの嬉しそうな表情が見える。

「真田さん、眠れ ないの?」
「真っ白殿、違うでござる。」
「ん、あぁ・・・・・・装備品とか鉢巻は、横に置いといていいから・・・。」
「そうじゃないでござる。」
「ん?」

先程から否定を繰り返す真田さんに聞き返す。

「幸村でござる。」
「幸、村。」
「そうでござる。」
「眠れないの?」
「真っ白殿、話が飛んでるでござるよ?」
「ん、寝れないのなら・・・。」

確かここに、窓際に・・・違う、これは目覚ましと数枚のピクチャー。枕側にあるデスクへと手を伸ばす。
・・・あぁ、あった。

「はい、どうぞ。」
「真っ白殿、これは何でござるか?」
「ウサヴィっち。」
「うさう゛ぃっち、でござるか?」
「ん、そう。でキリネンコ。」
「キリネンコ、殿でござるか。」
「ん、そう。」
「で、某にこれをどうしろと?」
「え。こう、抱きついて寝るの。」
「抱きつく?」
「ん、そ。何かに抱きつくと人間落ち着いて寝れるんだよ。小さいころ母に抱きついた記憶とかで・・・」
「・・・。」
「抱きつくと、ぐっすりと寝られるんだよ。」
「だが現に真っ白殿はそれを向こうへやったでござるよ。」
「寝ぐせ。」
「寝相では?」
「ん、そう。」
「真っ白殿、眠いでござるか?」
「めっさ。」
「・・・真っ白殿。」

眠りの国へ落ちる私の耳に幸村さんの声が響く。
しかし、その声は先程の子犬のような声と違って、どこか落ち着いている。


「今度、某の名前を間違えたら・・・ただで済まされぬからな。」


あぁ、夢かな。まどろむ意識の中ではそれしか思い浮かばなかった。

金属音の外れる音と、幸村さんの「キリネンコ殿、よろしくお願いいたす。」と言う声が聞こえて布の擦れる音が聞こえた。



あ、電気消し忘れたと思うと同時に幸村さんの「真っ白殿、眠れないでござる・・・」と言う声で身体を起こして、寝ぼけ半分で家の電気全部消しにかかったのは此処だけの話だ。



あれ?ヤンデレ幸村降臨?

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