2.犬、ソファに置く
さて、連れ帰ったはいいもの、このきょ・・・いやいや。失礼だろ、これ。この巨大赤はどうするべきか。
まだ気、失っているようだし。
部屋全体を見回し、客用の黒いでかいソファの上に乗せる。
うつ伏せで乗せると息が出来ないので、親切に顔を上に向かせてソファに寝転がるように寝かす。
あぁ。ところで問題のアレだが。赤い二本の槍。
両手にしかと握っているので取り外す事は出来ないが、左手に握った槍は何とか取り外す事が出来た。
中々頑丈だった。なにあれ、なにあの指圧。いや、指力?
すっごく強く握ってた。指一本一本ずつ離す身にはすごく辛かった。
・・・まぁ、そんだけ獲物を離す機会がない、と言う事なんだろうけどさ、
左手から外した赤い槍の一本を目の前のソファ――赤い人の寝ているソファ――の足元に置いとく。
片割れを握る右手は床に下ろして寝かせる。
さて、どのような人物か。とりあえず、゛とりあえず゛の事がある場合に備えて、赤い人物の顔を覗く。
・・・えぇっと・・・あれ、なんだっけ・・・・・・。
ほら、雑誌とかテレビとかでとりあげられるアイドル雑誌・・・・・・・・・。
あぁ、ジャニーズ。ジャニーズ顔負けの顔だ。
ここでは普通鼻血をブーッと噴き出すものだろうが、生憎この手の顔には慣れた。いや、なんと言うか・・・顔のパーツの均等さ?
神が手を下して作ったような美しい顔のパーツの人もいたし、なによりも、彼らは゛人間らしさ゛の点でも、十分に立派だった。
「・・・自分が、そう言うことを言える、立場じゃない・・・・・・。」
心の中で呟いた考えを口に出すことでその考えを拭う。
とにかくも、前にいた゛場゛でこの手の格好良さには慣れたのだ。
それに、実際に゛使え゛なくては、役に立たないのだ。
この世の中、綺麗なだけでは生きてはいけない。
何の罪もない人がどれだけ汚れきった人間の餌食になったか。
「・・・自分も、そんな汚れきった人間の部類に、入らなければいいんだけど、な、」
またも呟く。
独り言は十八番だ。
今日の晩飯はみそ汁にしようか。いや、今さら味噌をつくるのは面倒くさい。なんというか、みそ汁の気分じゃない。
そうだ、ねこまんまをつくろう。ねこまんまだ、卵たっぷりの。
棒読みにも近いセリフを心の中で吐き出しながら台所へ足を運ばせる。
冷蔵庫を開けると卵が残りすくなく、急遽みそ汁バー(ver.)のねこまんまをつくる事になったのは秘密だ。
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