15.それが今の存在証明 某は真っ白殿が差し出してくれた和紙で鼻を噛みながら、真っ白殿が某の頭を撫でてくれるのが分かった。 「わ、悪かったで、ござ る・・・ 」 「うん、いいよ。真田さんが私が傷ついた理由を知ってくれたなら、いいよ。」 「 真っ白、殿 」 「ん。なに?」 時折咳き込む某の背中を撫でてくれる真っ白殿が聞き返す。 「真田、と呼ぶのは・・・やめて いただけないで あろう、か。」 「真田?」 「そう で、ござ、る」 「なんで?」 遠い人のように感じるから。佐助やお館様や兵達に"真田"と呼ばれなれてないから。 と真っ白殿に答えようとしたが、むせてしまって答えることができない。 真っ白殿が某の背中を撫でる。 「じゃぁ、なんて呼べばいいの?」 真っ白殿は某の背中を撫でながら尋ねる。 「ず 、 "真田" 、以外であれ ば 」 鼻水と涙を拭いながら答える。真っ白殿が某の腕を下へ退ける。 「じゃぁ、"幸村"、さん?」 真っ白殿は箱から和紙を摘みあげ、某の顔を拭う。 某は答えることができず、首を振って答える。 「そっか、幸村さん。」 真っ白殿は確かめるように某の名前を反芻する。 某は真っ白殿が某の名前を呼んでくれるたびに首を振って答える。 [*前へ][次へ#] [戻る] |