14.しろい人 「真っ白殿は女子であるから!女人であるからッ!!!そんな格好はしてはいけないでござるッ!!!」 と、真田さんは自分の顔を両手で隠しながら叫んだ。 私が真田さんの真意を確かめようと近づくと真田さんはどんどん後ろに退がるし、壁に当たったら足をばたばたして顔を両手で覆って否定した。いや、拒絶した、か。 ・・・ん。まぁ、そりゃぁ・・・いきなり、ね。近づいたら誰だって嫌がるかもしれないし、嫌いな奴には近づくな!ってなるかもしれない。 だけど、流石に全力の拒絶は傷付くなぁ・・・。 やばい、このままだとこの傷み、真田さんにぶつけそうだ。 それはヤバいな。真田さん、また泣いていたっぽいし。さっき拭いた涙がまた出来てたし。 あーあぁ、と心の中で溜息を吐いてからこのもやもやを閉じ込めた。 これ以上感情を込めて話すと真田さんを傷つけるかもしれないから、機械的な口調で話す。 やっぱり誰も私を分かってくれない。と言う自己勝手な思いが胸中を占める。うるさい、うざい、消えろ。そんな思い。 明日から真田さんにどう接しよう。 駄目だ、そんなの、そんな機械的なの、人間じゃない。感情 ない。 でも、ああ いやだ。これ以上傷付かれるのはいや だ。でも、傷つけるのは絶対に いやだ 傷つけるのは、絶対 したく ない なんだろう、なんだろう。女人だから、女子だからって言う言葉が触れたのかな。 ちょっとやばいな。危ない。ばらばらになりそう。分解しそう。 とりあえず寝よう、とベットに向かおうと背を向けた瞬間、腰に強い痛みが走る。 何?! 今まで味わったことのないような衝撃だったので、即座に背後へ振り返る。 すると、二度の鼻水涙で濡れた真田さんが視界に入った。 「す、すまないでござ、る 」 真田さんは鼻を啜りながら、枯れかけている声で言った。 こらえているのだろう。所々息を止めているのが分かった。 「お、お願いでござるから・・・某を、見捨てないで、ほしい、で ござ、る・・・・・・。」 真田さんが枯れかけた声で、涙をこらえる声で、そう言った。 うますぎじゃないか? 私は真田さんの言った言葉に否定の含みを持たせて心の中で思った。 真田さん、貴方。それを他の人に言っちゃダメだからね。 言ったら、酷い目にあうから。絶対、駄目だよ、お願いだから。 真田さんの言いたいことや思っていることは分かる。 だけど、真田さんの行動で傷付いた私はそれを了承しようとは思わない。 私は勝手な人間だ。あんな思いをする位なら、人と付き合わない事を選ぶ。 「真田さん。」 「 なんで、ござる か?」 真田さんはぐずぐずと言いながら、私の顔を見上げる。 その涙と鼻水で濡れた顔を拭いてあげたいけど、まだ後ね。私の傷付いた理由を聞いてね。 「真田さん、私、なんで傷付いたと思う?」 「?」 ぐず、ぐず、と言う声が聞こえる。 「私、真田さんのさっきの全力の拒否で、傷付いたから。」 「ずッ・・・ず、ずまないで、ござ、る・・・ 」 「聞いて。」 再度謝る真田さんに叱咤を含んだ声で呼びかける。 「だから、お願いだから。もう二度と、私にあんな行為をとらないで。」 「ぐずっ」 「私が真田さんに何か聞いた時はちゃんと答えて。逃げないで。お願いだから、ちゃんと答えて。」 「うっ、う、ぐず 」 「あれ、本当に、いや だから。お願いだから、もう二度と、しないで。」 「う ぐ」 頻繁に息を止めて涙を止めている真田さんの背中をさする。 真田さんは ごほごほっ と咳きこみ、まだ息を止める。 「私が真田さんに慣れているときはいいけど、私達はまだ、初対面でしょう?」 「うぅ、ず 」 「だから、慣れるまで、待って。あの行動は、止めて、ね。」 「 ず。」 「私も、真田さんが女人に慣れるまで待つから。真田さんが私に慣れるまで待つから、ね。だから、お互いに頑張ろうよ、ね。」 「う 」 と、真田さんはぶんぶんと首を縦に振り、両腕で自身の顔を拭った。 乱暴に顔を拭う真田さんの腕を下へ下して、ティッシュケースを差し出す。 真田さんはそれをしばらく見た後、うっとまた顔を歪めてティッシュを乱暴に何枚を抜き出し、鼻を噛んだ。 鼻を噛んでまた乱暴に涙が出る目尻を拭う彼の頭を何度も何度も撫でてあげた。 (罵倒しろ、誰か、この私を。) 特殊設定1. 交渉とかそんなのを色々と専攻しているから自然と(無意識に)自分の(味方の)有利な状況に持っていきやすい。 幸村に(他人に)嫌われたくないと言う思いを叶えるために、幸村を慰めるよりも自分の要望を叶える為の言葉を言った。 しかし、慰めたいと思った。だけど自分の傷付いた思いを聞いてほしい。 利己と献身中途半端さでいった自分を真っ白は自身を殺してくれ、消してくれと願って最後の言葉を放った。 (真っ白の中では、罵倒=その場から退場しなければいけない) しにたい、と不意に思った [*前へ][次へ#] [戻る] |