107. ちょうしょく 目が覚める。軽く伸びをして目を擦る。確か今日は 不動屋さんとの契約をする前に一旦下見に行って、その後契約するかどうかをする日、だ。ベットから降りて洗面所へと向かう。まずは髪を洗ってその後洗顔。そして髪を拭きながら歯ブラシをとって歯磨き粉をつける。実家では一つのコップに最大五本までの歯ブラシをつけていたが、七本だと・・・いやはや。一本だけでもこんなに違うんだなぁ。と思いつつ、歯磨き粉を付けた歯ブラシでの歯磨きを終え、軽く髪を乾かす。 軽い朝食をとる為に居間へ向かう。確か集合時間は十時。昨日行った距離と時間を考えれば、原付で十分程あれば着ける。 居間へ向かうと、佐助さんの姿があった。 「おはよ。」 「 おはよ。」 「やっぱ眠そうだねぇ。」 「・・・まぁ。」 「旦那達もそうだけど・・・。こんな遅くまで寝てるのって 普通なの?」 「 や。仕事ある時以外は・・・やっぱ 昼過ぎまで寝たいから・・・。」 「ふーん。ま、真田の旦那は朝の訓練が出来ないから こうも遅くまで寝てるんだろうけどさ・・・家買ったら 覚悟した方がいいよ。」 ビクリ。その言葉で 最初幸村さんの言った「朝の稽古」と言う言葉が思い出される。ちくしょう。あれ以来 大声で叫ばないし早朝に起きた事ないから ついうっかり忘れてた。くそぅッ。 佐助さんの無表情と遠い目をした表情で、覚悟を決めるしかなかった。 「でも、ま。座っててよ。今 軽いもん持ってきてあげるから。」 「あ、うん・・・」 と佐助さんは私の肩を押してソファに座らせ、台所へと消えて行った。・・・本当に軽い物だといいなぁ・・・。 その後すぐ、結構早めに佐助さんがお盆をもって現れた。そ、それはッ・・・!!! 「はい、『ねこまんま』 だっけ?これ・・・。料理の本の上にちょこんと乗ってたよ。」 「わぁ・・・!!ありがとうございますッ!!!」 と言って手を合わせて いただきます のポーズをとり、箸をとって 佐助さんが作ってくれたねこまんまを食す。 「・・・もしかして、うちの旦那が来るまで それ、アンタの主食だった?」 「 ま・・・一人暮らしだし。豪勢な料理作っても誰も食べる人 いないし。それに一人では食べきれない量だからね。」 「ふーん。」 と佐助さんが頷くのを聞いて 湯のみの冷たいお茶を飲む。 「これじゃぁ、胃は小さくなるわなぁ・・・。」 「ん?まぁね。それに、いざと言う時の為に訓練しといた方がいいし。」 「訓練?」 「飢餓。遠い将来、食糧不足に陥るっていうから。」 「遠い将来って・・・その頃までにアンタは生きてんのか?」 「・・・あ。」 「くっ。じゃ、アンタの その小さな胃も直さなきゃいけねぇよな。真っ白。」 「・・・でも、減らせるものは減らせてお金を貯めるのが最も効率のいい近道だと思うから・・・。」 「じゃぁ、あの出費はどうすんの?!」 「 や。それはそれー。これはこれー。」 「逸らすなっ。」 と言って佐助さんが私にデコピンをする。・・・地味に痛かった。された所を擦りながらぼんやりと考える。 そういや、何時も寝室と客用の机を使って食事していたけど、後々の事を考えるとそうはいかない。かと言って 今日必要な物を買いに行くわけにはいかないし・・・あ、そう言えば。昨日、買う山と家のやつ見せて貰った時に 佐助さんとこじゅさん、大きく目を見開かせて「買うの!?」なんて事を言ってたような気がする・・・。少なくとも、こちらの金銭感覚はあるのかな・・・。結構前に 幸村さんに買った「お金の本」買ってあげといて良かったな・・・低学年向けの絵本だけど。まぁ、アレはこちらでの最低限必要な情報だけが載っているから無事なんだけど。・・・と言うか、児童向けの絵本に金の稼ぎ方とか荒稼ぎまで載っている絵本はどうなんだ。 ・・・そんな事を考えると、黒い方は私で・・・カードは不手際が目立つと怪しくなっちゃうから、現金で渡した方がいいよね。・・・ん、何時もの長財布の他に、何か財布無かったっけ・・・。ま、あると信じよう。それに、ま・・・んなに怪しく思われないだろう。例え誰かが私の長財布を使ったとしても!他人の空似とごまかしてくれるはずさ。そうさ、きっと! それに、そんな強盗起きましたっていう事件も報道されてないしな・・・ ま、大丈夫だろ。・・・と言うわけで、今日の私の財布は小銭入れ、か・・・。 よし。そんな事の考えを纏めると、私は台所へ向かう。 「佐助さん、佐助さん。」 「ん?」 と、佐助さんは家事を止める手を止めてこちらへ向く。・・・悪い。家事を止めちゃって・・・。 「あのね、今日。佐助さん達に買ってきて欲しいものがあるんだけど…。」 「! 何々?俺様に出来る事なら何でも言ってねぇ!」 と、佐助さんがやけにウキウキとした気分で私にそう返す。・・・そんなに外に出たかったんだ。 「あ、うん。あのさ、お布団と机、買って来て貰いたいんだ。できれば机、大人数が使用できるの。」 「ふんふん。」 「で。後、食器。何時までもお客様用の使うわけにはいかないから。食器一式、買って来て欲しいの。」 「ふーん・・・。後は?」 「ん?ま、ないけど…あ。布団の他に、その替え買っておいても・・・いや、でも・・・」 「・・・とりあえず、寝具一式については、シーツ位でいいよな?替えるやつは・・・。」 「あ、うん。それで、後でお金渡すから。」 「ん、ん・・・。」 「で、多分二人位でも荷物 持ちきれないと思うから・・・レジの人に運搬、頼んでみて。多分 配達の事頼まれると思うから・・・。」 「ん。」 「あ。」 「ん?」 「住所・・・忘れてた・・・。」 「え?じゅうしょ、ってのが必要なの?」 「んー・・・ま、情報なんだけどね、ただの。あ、宛先は××真っ白、で。」 「うん。」 「えーっと、速達 でかな。うん、その方がいい。」 「え?なんで?」 「や、今日含めて二日間はちょっと手続きをするから・・・。」 「へぇ。」 「で、その次の日に引っ越し準備してはいしゅうりょーってな訳。・・・・」 「あ、ちょっと。無理してんなら休んだ方がいいぞ。無理は身体によくないからな。」 「う・・・」 オカン、と口に出そうになったのを堪える。 「や、大丈夫です。引っ越したら すぐ休むつもりですし。」 「・・・なら いいんだけどな・・・。」 「ま、大丈夫だって。そんな無理して倒れる程無理しないから。その前に即寝るから。」 「 だといいんだが。」 「なんだとー。あ、」 「ん?まだ何かあんの?」 「うん。佐助さんって、にとり までの行き方、分かる?」 「・・・あ。」 「・・・また、幸村さん か・・・。」 「あー、うん、また旦那だね。」 「・・・ちゃんと電車に乗れるのかどうかが心配だ・・・。」 「・・・他に真っ白と一緒に乗ったやつって、いないの?」 「えーっと、確か なりさんと政宗さんと乗った。」 確か 電車内での騒動があった、はず。 「ふーん、そっか・・・。」 「出来たら、こちらの金銭感覚の分かっている人と一緒に行ってほしいんですけどね。」 「・・・。」 佐助さんは顎に指を当てて首を軽く後ろへ逸らした後、 「・・・今回は 奥州の竜達に任せるか・・・。」 「え?」 「ん。いや、真っ白ちゃん。その にとりっつーとこまでの道、分かる?」 「何を言ってるんですか。いざと言う迷子用の為に何駅分で降りてどこがどこでどこの目印かくらい、覚えているよ。」 「・・・(旦那と同じだ・・・) そ。なら、大丈夫だね。」 「? 何が?」 「や、何も。こっちの事は心配すんなよ。なんとか上手くやっとくからさ。」 「? そう。」 「あ、時間。大丈夫なのか?」 「え・・・あ、やべぇ・・・。」 「・・・俺が送ってってあげようか?」 「や、いい。原付で飛ばせば 例え予定より遅れても何とか間に合う、はず!じゃ、ごちそうさまでした!美味しかったです!!」 と言って、持ってきた食器を流しに着けて 急いで寝室へ向かう。なりさんが起きていたが、とりあえず着替えると言う事で押入れを閉めさせてもらった。 「何故我が貴様の指図を受けねばならぬのだ。」(襖に手を当てて真っ白の開閉を阻止しながら) 「いや、女性の着替えを覗くのはとんでもないと思って・・・」(襖に両手をやって何とか閉めようとする) 「ならば そこに転がっている者共はどうするのだ。」 「いや、多分起きないかと・・・。」 「・・・。」 「や、なんでそんな不審そうな目で見てるんですかッ!!!」 「いや。貴様の後ろを見ていただけだ。我は日輪を拝む。そこを退け。」 「あぁ、もう!分かった、分かったよ!ちくしょう!なら、着る服決めて洗面所で着替えてやるッ!!!」(真っ白、着用する服を掴んで脱兎) 「・・・狸寝入りも得意か、竜よ。」 「その言葉、お前の下で寝ている鬼にそっくりそのまま返してやるぜ、okra.」 [*前へ][次へ#] [戻る] |