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106. ふどうやさん
「えーっと、これは・・・?立地も申し分ないと思うけど…。」
「・・・いや。もー少し 長閑な方が・・・。」
「んー・・・俺様は、こっちの方が・・・」
「あ!スーパーに近いッ!」
「でしょでしょ?」
「んな事ぁ言ってもなぁ・・・家の周りに民家が立ち並んでんじゃねぇか。」
「いやいや。木を隠すなら森の中って言うでしょ?」
「んー・・・でもなぁ・・・いい加減、ご近所付き合いも面倒臭くなったし・・・かと言っていきなり田舎!だと、仕事にも影響あるし金銭面でも不安になるからなぁ・・・。」
「んー・・・じゃぁ、どうする?これの他にいい物件は無いよ?」
「・・・だが 畑は外せねぇぞ。」
「分かってるよ、そんな事。いざとなれば大事な食糧源にもなるんだから。金銭面にも問題も起きないはずッ!」
「(必死だねぇ・・・)」
「あ、お客さん お客さん。ちょっと。」

と言って不動屋さんが奥から出てくる。
しかし、さっきまで対応していたのとは全く別の人だ。

「何ですか?いわくつきの物件とかは断固お断りですから。」
「いやいや、そういうのじゃなくてね・・・丁度いい物件が他にあったんだよ。」
「ほう。」
「へぇ。」

と こじゅさんと佐助さんが頷くが、何か都合がよすぎて つい身構えてしまう。
不動屋さんが数枚の紙が閉ざされた資料を渡す。

「これこれ。どうやら年代物でさ。古い知人やらを当たって聞いてみたら出てきたよ。所在地も国道や高速から離れていて、辺りの民家は少なくて田圃ばかり。電気や熱は直接会社に問い合わせて引いてもらわなきゃいけないけど、昔ながらの暮らしをするにはいい物件だと思うよ。」
「・・・え、水は?」
「水は家の近くに川があるから、そこから汲んで来てね。」
「え、お風呂は?」
「それも近場から汲んで来てね。」
「え、お湯は?」
「それは昔ながらの・・・。」
「・・・待って。今、面倒くさい方程式が 今 私の中で組み立ったッ!!」
「あ?風呂の焚き場なんて当たり前じゃねーか。」
「俺様 今回ばかりは駄目だから、駄目。」
「いや、違うッ!ちょ、二人共ッ!!何を誤解してんの!!?!違うよ、私達のとこでは自動的にお湯が出るんだよ!!?!」
「嘘だろぉッ!!!?!!!?!」
「お前んとこ侍女がいて湯を沸かせてるんじゃなかったのかッ!!!」
「いねぇよ!! そんな事に金使うぐらいならもっと他のところに使うよッ!!!!」
「いやいや・・・面白い冗談を言うねぇ、アンタ等は。何だい、なんかの映画やテレビの影響かい。」
「・・・え?」
「やー、どっちがアンタの恋人だが夫だが知らないけどねぇ・・・恋人交換とかかい?いいご身分だねぇ。そう言う事が出来る金があんのって。」
「え?いやいやいやいや。何誤解してんの?何誤解してるんですか。おじいちゃん。」
「え?そぉ?そうそう、俺様が」

「この子の恋人。」
「俺がこいつの夫だ。」


・・・。

なんか、怖いッ!!!!私の間だけ絶対零度が!凍りがッ!絶対零度の凍気が通り過ぎているッ!!!吹き荒んでいるッ!!!!!!
肩に置かれた佐助さんの手と頭に置かれたこじゅさんの手が、なんか今怖いッ!!!!!!!


「・・・ねぇ、片倉さん。何言っちゃってんの? 自分から夫なんて名乗るなんて、行きすぎてない?」
「じゃぁ手前ぇのそれはどうなんだ。俺ぁ もう真っ白に言ったから良いんだよ。」
「それなら俺様もしたよ?じゃぁ、俺様も真っ白ちゃんの夫って名乗ってもいいのかなぁ?真っ白ちゃんに男二人いたら可笑しいでしょ?」
「 じゃぁ、手前ぇが消えな。」
「そっちこそ。」

絶対零度の風が吹き荒ぶ。あぁ、誰か この状況をどうにかしてくれ。

「・・・大変だねぇ。あんた。」
「そう言う事言う暇があるなら どーにかして下さい。」

一発触発の状態に軽く泣きそうになる。・・・ そうだ。

「なんかこれに乗じて、ガス・光・水をここに引いてくれません?これ、買うんで?」
「へぇ、山ごと?」
「うん。山ごと。一々借りても面倒くさいし。」
「おやおや、なら 地税はどうするんだい?」
「んー・・・ま、山だと高いのは覚悟してるから・・・別に気にしないんで。」
「へぇ・・・じゃ、こちらから企業に連絡しとくから、代金はそちらで払っとくんだよ。」
「はい、ありがとうございます。」
「後、この家。売られてから随分と手入れされてないからね。その修理も掃除も、あんた等でやるんだよ。」
「・・・え、売られ?修理?」
「・・・一々他人のプライベートに突っ込まないと進まないのかい?」

くっ!こ、このおじいちゃん・・・しっかり聞いていたッ!!!

「まぁ・・・でも、こっちはこっちで買い手なんだから、消費者保護条約に基づいて聞く権利はあるでしょう。いわくつきとかマジ勘弁。」
「あぁ、それはないから安心しな。ただ。ほとんど手の付けられてない状態だから、もしかしたら雨漏りとかの危険もあるから、って言う意味。」
「あ、それならこじゅさん達もやってくれる筈だから・・・ね?」
「当たり前だろうが。」
「俺様も忘れないでね。」
「・・・仲睦まじいね。」
「それ、褒め言葉です。」
「(全然意味分かってないな、この子・・・)」

なんか不動屋さんが訝しげな目をしていたが、気にしない事にした。

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