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98. 晩酌
少し寝たら 少し体調がよくなった。そりゃ 自分のベットで寝てるからなんだろうけどさ。もう夜中で部屋は真っ暗だった。明るい時間帯から何時の間にか暗い時間帯に。そこまで熟睡していたのかと思うと同時に、小さい頃、木の並列した道を歩いていて 起きたら日常に生活していた学校ではなく、それは夢であって、何時の間にか家のベットで寝ていた経験を思い出した。それは俗に言う、現実と夢の区別が出来て無いと言うのだろうけど。あー・・・思い出しただけでも顔が赤い。顔を覆う手が火照りを感じた。いや、身体全体が火照ってるのかも。これと同じように、前のも夢だったのかなぁ、なんて思うけど、自分ではない他の寝息と、押入れと床で寝ている人たちを見ると、夢でないのだと認識する。あ。

「 おはよーさん。」

と、布団に入りかけた佐助さんに挨拶された。今は夜だが、

「 おはよ。」

と、私が起きた時間であったので 挨拶をした。

「よく寝てたねー。旦那達が起こさなかったように寝たのかな?」
「さぁ・・・熟睡してたし・・・。」

と言って、しばらく考える。・・・あぁ、うん。やっぱり寝れない。かと言って、このまま行くのも気が引けるし、まぁ 就寝前の酒もあるし、うん。

「佐助さん。」
「ん?」
「一杯、やります?」

と、サラリーマンよろしくの酒を飲む仕草を手でとると、佐助さんはニッと笑って、座り込んだ布団の上から立ちあがった。


居間の仕事用のデスクの上を軽く片付けて、棚と棚の間に置いた、滅多に使われてない白い折り畳みの椅子を出す。普段使っている椅子より面積は少ないが、座れる事は出来る。私は佐助さんに そこに座って待ってるように言い、台所から常温保存の酒と徳利一式を取り出す。うん、二人分ある。
それを持って居間にあるデスクへ向かう。佐助さんは窓の外の景色を見ていた。釣られて外を見てみると、満月だった。外の街灯が照らされている。時計を見ると、10を回っていた。そう言えば、前 幸村さんに仕事してるの見つかって、結局終わるまで待たせてしまったのも、こういう時期だったと思う。満月が出ているような。確か、二時が怖いと言って 自爆していた。
私はデスクの椅子の上に座り、体育座りをした。この椅子はくるくる回るから好きだ。

「落ちない?」
「大丈夫ですよ。」

とは言っても、酒をお猪口へ注ぎいれるには危なかったので、普通に足を下ろした。佐助さんにお猪口の一つを渡して、そこに酒を注ぐ。

「あ、お酒、徳利に入れた方が風流でしたか?」
「いや、別に。」

と、佐助さんは酒を注がれるお猪口を見たまま答える。自分の分のお猪口をとって酒を注ごうとしたら 佐助さんに止められた。

「俺がいれるよ。」
「 じゃぁ。」

と言って佐助さんに自分のお猪口を差し出す。佐助さんは私の手から酒をとって、とくとくと酒を注いだ。日本酒特有の匂いが鼻孔をついた。
互いの杯に酒が注がれたのを見計らって、「乾杯」とお猪口を掲げてみた。それに乗ってくれて 互いのお猪口を かつんと合わせた。
一口口に含むと、荒くない旨味が広がった。

「ん。これ、真っ白ちゃんの所では、こんな風に売られてんの?」
「まぁ。徳利バージョンとか大きな瓶のもあるけど、一人で飲むにはでか過ぎるし高すぎるから。」
「 じゃぁ、なんで二人分のお猪口があんの?」
「あはっ、佐助さんも人が悪いねー。そんなの、それに入ってたお酒、買ったからに決まってるじゃない。」
「だけど、一人には大きすぎる、って言ってなかったけ?」
「どーしても 飲みたいお酒だったんですよ。」
「あぁ、そう。」

そう言って佐助さんはもう一口口に含む。私も自分のお猪口に残る酒を口に含み、余韻を楽しむ。甘すぎず、辛すぎず。まだ日本酒マスターと言えない私にとっては、これ位が丁度いい。いや、ただ 辛口のに慣れてない、ってだけだけど・・・。

酒が途切れそうになって自分で入れようとしたら、佐助さんに注がれた。佐助さんが自分のに注ごうとしたので、見計らって私が酒をとり、佐助さんのお猪口に注ぐ。そういう事をして、互いにとりとめのない話をした。

「真っ白ちゃん、俺に何か 聞きたいこと、あるんじゃない?」

佐助さんが そう話を切り出した事によって、今日一番知りたい事実を、佐助さんに聞いてみた。

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