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97. オカンの一言
献立を作って材料を取りに行こうとしたら 茹で蛸のように顔を真っ赤かにした竜の旦那が出てきた。ふらふらと二、三歩歩いたと思ったら蹲って自分の顔を隠し始めて なんか唸ってた。正直気持ち悪かった。
次に調味料が足りなかったので、買ってきた袋に入ってないかと確かめに居間に戻ったら、今度はソファで蹲っていた毛利の旦那がいた。竜の旦那は毛利の旦那の座っているソファの片隅で(毛利の旦那との距離はめっちゃ空いてるけど)腕を組んでひたすら何かブツブツ言っていた。え、なに この気持ち悪い物体達は。毛利の旦那も顔真っ赤だし、竜の旦那に至っては、さっきよりマシだけど 顔は未だに赤い。
え、なに?なにこれ?何が起こったの?疑問に思って、一度取りかかった食事の準備を一時中断して、偶然を装って一度居間に戻ってみる。今度は鬼!あんたかッ!!鬼の旦那は最初の竜の旦那とは比べものにならないほど顔・・・いや、ぶっちゃけ身体全体を赤くしていた。微妙に頭から湯気が出ている。あ!俺様見た事あるッ!俺様、これ 見た事あるよッ!!!! 何故か真っ白ちゃんの本棚の奥底にあった 少女漫画とやらの告白した主人公の女の子に似ているッ!!!何故かその本一冊しかなかったけどッ!!!多分、買い間違えたりとかしたんかなー・・・。
そう俺様が呆気に取られているにも関わらず、鬼の旦那は毛利の旦那ではなく、竜の旦那のところへ行って、また何やらを言い始めた。え、ええええええー・・・何これ、何これ。お、男三人が固まって顔真っ赤かって・・・なんか気持ち悪っ!お、女の子ならまだしも、男って・・・。俺様はちょっと込み上げてくる吐き気を押さえつつ、調理に戻る。
竜の旦那も毛利の旦那も、まだ自分の世界から戻ってなかった。

今日の夕飯の準備をようやく終えて再度居間に戻ると、今度は片倉のおっさんが旦那達を叱っていた。・・・あれ、うちの旦那がいない。

「政宗様、毛利、長曾我部・・・そこまで自分を見失っておりますと、見苦しいにも程がありますぞ。」
「Shut up, 小十郎。お、男には うろたえる時もあんだッ!」
「黙れッ!!竜の右目が!」
「し、仕方無ぇだろぃ・・・あ、あんな・・・!!」

えぇ・・・鬼の旦那がしおらしいのって、なんか・・・うッ。あ、そうか!そういや、鬼の旦那、姫若子って呼ばれてた時期があったよね!!?!あ、うん!きっとそうなんだ!その所為なんだッ!!
そういや、アンタ等・・・浴衣に着替えてるよね・・・俺様、忍装束を脱いで 一生懸命アンタ等の飯作ってたってーのに・・・。
とりあえず 説教している片倉さんと叱られている竜の旦那達をスルーして居間の机の上に置かれた袋を片付ける。ごめんね、真っ白ちゃん・・・俺の計算だと、アンタの買ってくれた食料、二日で切れそうだ・・・。

とりあえず、説教と叱られ組に食事の仕度をして欲しい事を伝えてから 真田の旦那と真っ白ちゃんを呼びにいった。まぁ、目と鼻の先だけど。片倉のおっさんの怒鳴り声で反応しないなんて・・・真田の旦那ならまだしも。真っ白ちゃん、寝てるんかなー。真っ白ちゃんの性格だと、出るのが憚られるから こそっと扉に耳を当てているものかと思ってたけど・・・。意識失ってない限り、こちらの状況を伺おうとするはずなんだけどなー。と思いながら扉を開けたら、硬直。
・・・あれ?旦那と真っ白ちゃんが、同巾 してる?え、いや待て待て待てよ、猿飛佐助。よぉく考えるんだ、旦那は女人に免疫が無いんだ。ついでに女の抱き方もしらない。だから、男と女の行う事を旦那は行ってないはずだし、俺の耳にもあちらさんの耳にもそう言う声は入ってないわけで、あぁよかった!!二人共服着ている!!衣服の乱れは無いッ!!ちくしょうッ!羨ましいぞ、旦那ッ!!!
旦那も真っ白ちゃんも気持ちよさそうに寝ていたが、旦那だけ美味しい思いをさせるのも何だかなので、旦那だけ起こす事にした。同巾していた相手をしている相手に気付かされずに殺る方法の応用で、だ。これにはコツがいるが・・・お、旦那が起き始めた。真っ白ちゃんが少し身じろぎをしたけど 起きる気配は無い。そのまま揺さぶり続けていると旦那が目を開け始めた。目を擦り、不機嫌そうに俺様を見た。

「出歯亀しちゃってごめんねぇ、旦那。でも、御飯できたから 呼んだよ。」
「・・・俺は まだ、もう少し寝る・・・。」

そう言ってまた布団にもぐりこむ旦那。そうはさせるかっつーの。あ、よく見りゃ 真っ白ちゃんに腕枕してるッ!

「駄目だって。折角の夕飯が冷めちまうよ?」
「・・・後でチンして食べるでござる・・・。」
「え、チンしてって何・・・ってこら!旦那!寝ないっ!!」

後で真っ白ちゃんに チンして の意味を尋ねようと思いながらも旦那を必死で起こす。ここで寝られると、旦那が自分で起きるまで起きないんだよ、ね!
何時ものように旦那を起こしていたら、旦那を揺さぶる振動が真っ白ちゃんに伝わって 真っ白ちゃんが自分の頭を押さえながら目を開けた。・・・風邪か?それとも、頭痛?
真っ白ちゃんは俺と旦那を見比べた後、掠れた声で「めし・・・?」と呟いた。・・・うん、俺様忍だから、顔に出す事も出さない事も得意よー。自分の生理作用を我慢する事なんて、得意。必死。忍だから 相手に悟られないようにする術は全部得意だよー。なんだって、優秀な忍だから。
真っ白ちゃんは暫く目を瞑って(あれ?寝ている?)、その後旦那に「食べに行きなよ」と言った。旦那は「えぇ」と不服そうな顔をしたが、真っ白ちゃんが何も言わず、自分に被さっていた布団を引きずって自分の寝具へボスンと沈んで寝ちゃったものだから、旦那は何も言えなかった。
なぁんか、こう言う、行動で示す って所が旦那と似てるなぁ。と思いながら、拗ねている旦那の頭を撫でて居間へ連れて行った。
あ、机。と思ったが、なんと片倉さんが 竜の旦那と毛利の旦那、そして鬼の旦那に正座をさせていたので準備する必要が無かった。ラッキー。真田の旦那が何故先に食べるのかとブーイングの嵐が起こったが、片倉さんの「手前ぇ、真っ白に何もしなかっただろうなぁ」と言う脅しに似た質疑に、「当然であろう。契りを結んでおらぬ相手に、手は出さん。」と旦那が平然と答えた為、その嵐は治まった。旦那、漢になったねぇ。とちょっと大将みたいなテンションが入ったが、あれ?旦那 何時の間にそんな知識身につけたの?と言う疑問が浮上した。・・・多分、契りってーのは、旦那の中では別の意味なんだろうなぁ・・・約束って言う意味の。手を出す、ってのは知らんけど・・・。
何か母親的な感傷に浸ってしまったが、竜の旦那達の分は別にしてとっておき、真田の旦那と片倉さんで夕飯をとった。竜の旦那達は俺達の食卓から背を向けて正座していた。・・・一国の主を部下が正座させてもよいのだろうか・・・しかも、半ば夕飯抜き・・・と、常識みたいなものに疑問を抱いたが、片倉さんも旦那も気にしてなさそうだったので、別にして置いといた。
でも、これらを片付けるのって・・・俺様だよね?


竜の旦那達の食器の洗いも、うちの旦那の食器の洗いを終えると、皆寝てた。あー・・・くっそ、この怠け者ッ!・・・ってまではいかないか。よく見ると、真っ白ちゃんのベットの脇に若草色の浴衣が置かれていた。・・・俺様の分かな?サイズ的にもそうだし・・・。毛利の旦那と色被りそ・・・と思っていたが、毛利の旦那の方は濃い緑色の方だったので、ま 大丈夫か。と思って 真っ白ちゃんが買った浴衣に袖を通す。・・・ん、ま ピッタリ、かな。多分 竜の旦那や鬼の旦那と相談して買ったのかなぁ。サイズ。微妙に腕の長さが足りてないけど、いっか。
真っ白ちゃんが買ってくれたヘアバンドを外して さぁ寝ようか、と思ったところで真っ白ちゃんが起きた。一体何なのかなぁ と様子をうかがってたら、俺様の方を見て、しばらくぼーっとした後、「晩酌付き合ってくれませんか?」と言われた。特に断る理由もないし、時間外労働もオールなんて日常の事だから、了承の返事を出した。

だけど、ね。


真っ白ちゃんが話した内容には 流石の俺様も、ピキッと来た。なんか、今まで我慢してきた・・・我慢緒?堪忍袋の緒が切れた感じ。



旦那、 俺だって人間だ。



それは忍が言っちゃならねぇ言葉だけど。
忍には不必要な感情で、邪魔なもんだけど。



佐助がキレている理由は、「早過ぎだろッ!」「フライングしすぎだろッ!」と言う気持ちから。


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