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その言葉が聞きたかった。
林檎様へ/20000打/切







俺たちの関係って


こんな簡単なもので崩れてしまうくらい

薄っぺらいものだったっけ?










『ふざけんじゃねぇよ。』

『…っんとに頭きた。もう俺に構うな!』

『それはこっちのセリフだ。てめぇの顔なんかもう見たくねえ。』

『上等。』


『『じゃあな。』』





俺達は喧嘩した。
何でだっけ。理由は忘れた。たった数日前の事なのに、その1日1日が長くて退屈で胸苦しい日々だった。
頭はその言い争いの方だけを鮮明に覚えている。
どうせくだらない理由なんだろうけれど。

ぼーっと万事屋から見える景色を窓に寄っ掛かりながら眺める。
今日は朝から雨。
蒼黒い色をまとった空とこの町が、最悪なあの日の事を思い出させた。

むしゃくしゃして一時の自分の感情を抑えられない餓鬼みたいに、大人になれなかった自分が今となっちゃあ馬鹿らしくて笑える。と同時に怒りを覚える。

あの時の土方の冷たい視線が脳裏に焼きついていた。
何だろう、冷たい。と言っても今まで一緒にいた時に見るような表情じゃなくて、一回も会ったことのない奴に見せる表情みたいな…。今思い出すだけでも目眩がするくらい怖かった。

今俺とあいつが会ったら、あの時みたいな優しい笑みを俺に向けてくれるのだろうか。
向けてくれると信じたい。が、期待は薄い。

でも、土方に会いたい。その感情だけは喧嘩したその日からずっと薄れる事は無かった。

お前は寂しくないの?
俺はすげえ寂しいよ。

お前は俺に会いたくないの?
…俺はお前に会いたい。


あの冷たい視線は嘘だと言って、あの冷たい態度も、言葉も全部嘘だったと言って。

気づけば泣いている自分がここにいる。
どれだけあいつに依存しているのだろうか。

着流しの袖口で涙を拭う。情けない。
…今更会えないよな。

拭っても拭っても拭いきれない水が、ポロポロ顎をつたって床に落ちる。

こんな日はパチンコにでも行こう。ただの気晴らし程度に。


傘を広げて万事屋を出た。




 ──────



煩い店内は俺の気分を幾分か紛らわせてくれた。
儲かったかとかそういう事を聞かれるとぶっちゃけ負けまくったが、でもこの感情が少しでも楽な方向に向かうならそれだけでよかった。

途中で会った長谷川さんと他愛のない話をしながら帰り道を辿る。

ザーザーと止むことのない雨が俺の頭を埋める。

家に帰ったらすぐ寝てしまおう。

そんな事を考えていたら、前方から黒い隊服を身にまとった漆黒の髪の色と栗色の髪の色の奴2人が歩いてきた。

いきなり胸がどくどく言いだす。
血が体中を何倍ものスピードで廻るような感覚にふらふらする。



…やばい…。
今、あいつと会ったら…。

「あ、あれ真撰組の…。」
そう言いかけた長谷川さんを「っ…長谷川さ、ん。俺ちょっと…わりい!」と遮り、1人でパニクって適当に謝ってその場を立ち去った。

もう死に物狂いで走って走った。
傘は邪魔だから途中で手放した。
びちゃびちゃになりながら走る。
ぱしゃっ、ぱしゃっ、という音が足が地面を蹴る度に鳴る。
胸が痛い…血液の流れが速い。
土方に会うのが嫌だ、というより怖い。

その時、後ろから彼が自分を追いかけてくる事に俺は全然気がつかなかった。


はぁっ…はぁっ…も、だめだ…っ。


段々走る速度が下がって、ついには足が止まって、民家と民家の間の…だけれど結構なスペースがあるその場に座り込む。
服が肌にまとわりついて気持ちわるかったけどあまり気にならなかった。

人目につかないような場所だし、さっきのところから随分離れてるとこだからという気の緩みから一気にまたあの感情が沸き起こる。同時に涙がまた伝う。


「う…っ…ひじ、かた……。」

雨の中走った後で疲れきって、冷え切った体から無理やり絞り出すような声だったけれども、声に出して呟いてみたら幾分か気分が楽になった。何回も何回もその名を呼ぶ。ごめんなさい。そうあの時言えたらこんな辛いことなかったのに。



ふと後ろから抱き締められるような暖かな感覚に陥った。
耳元では荒い息づかい、鼻をかすめるのは煙草の香り。


「…ひじかた。」



「っはぁ…、んで、逃げんだ。」

雨の音のする中で、久しぶりな声が確実に聞こえた。
久しぶりだけど聞き慣れた低いトーンの、俺をすごく落ち着かせる声。


「…っ…。」

こいつもびしょびしょに濡れてる…。
なんでこんなになりながら追っかけてきたんだ…。
こんな状態で、お前に合わせる顔なんて持ち合わせちゃあいないのに。



「お前…っ…酷い顔してる、」

ぐしゃぐしゃになった俺の顔を見てそう土方が呟いた言葉に「誰のせいだと。」と、反射的に答える自分。いつもの癖。





「俺か。」


「…っっ!そうだよバカ野郎!今更優しくなんかすんな。」

会いたかったよ。
すごくすごく、
どうしてこれを言えないんだろう。

ただただ抱き締めてくれる土方に体を震わせながら泣き続ける。

ぐいっと頭を上げられ、唇に暖かく柔らかい感触。

「ん…っは、ン。」
口の中を這う舌。
いきなり何してくんだこいつは、




ゆったりと唇を離される。




「会いたかったんだ俺は、銀時に。」



「……俺も土方に会いたかったよ。」

自然と言葉が綻ぶ。


「後悔したんだすごく、」

「俺も、だよ。」



「胸クソ悪いけど、お前が居なきゃダメだったんだ。」


「俺も吐き気がすっけど、お前が居なきゃ…ダメだった。」



「だから言ってやるよ。」


「奇遇だな…俺もてめぇに言うことあんだ。」



ぐしりと涙を拭って顔を見上げた。








「「悪かった。」」












簡単に崩れてしまう俺たちの関係は



それ以上に簡単に修復できて





そしてもっともっと固いものになる。




沢山喧嘩して沢山仲直りして、



沢山愛しあおう。



な?












林檎様キリ番20000打おめでとうございました!
せっかくの20000打だったので裏キリ番としてその番号にだけ「おめでとう」表示が出るという形にしていました!

いきなりの事でしたのにリクエストくださった林檎様に感謝いたします!

このような文で宜しかったでしょうか(あわわ>_<)

また暇つぶしにでも来てくだされば光栄です^ω^
では、失礼いたします!


































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