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サンプル
SM銀時×土方@
 差し出される書類を右手で受け取りながら、土方の左手は忙しなく銀時の髪を弄んでいる。その銀時はといえば、彼の膝に頭を擦り付けて甘えるように腰にしがみついている。原田は苦笑しながら、そんな光景を見下ろした。
「副長、次の見回りの時間ですが」
「あぁ、そうだったな・・・総悟はどうしたんだ?」
「それが、姿を見せなくて、代わりに自分が」
「・・・ったく、あの馬鹿」
 呆れたようなため息を漏らす土方に対し、原田は曖昧な笑顔を向けるだけだった。元々、夕方からの見回りは土方と沖田が担当していたのだが、その肝心の沖田の姿が昼から姿を見せない。こういう場合は間違いなく川原で昼寝をしているか甘味処で団子を齧っているのだ。だが今更、彼を探して見回りをするのは骨が折れる。本来ならば今から休みになるはずの原田が仕方なく名乗り出ることで、人員の補充をすることとなったようだ。
「すまねぇな。また別の日に休みは増やしてやるから」
「はい」
「・・・ほら、銀時。俺は今から見回りなんだよ。離せ」
「えー、やだー」
「やだじゃねぇ、我侭言うな」
「えぇー・・・」
 まるで親に構ってもらえずに拗ねている子供ような表情を浮かべている銀時に苦笑しながら、原田は思わず考えたままを口にしてしまっていた。
「本当に二人とも仲がいいんですね」
 からかう要素などまるで入れず、ただ純粋にその仲を語っただけの原田に対して、銀時は思いがけない反応を返してくれた。突然、土方の膝の上から飛び起きたかと思うと、その顔を真っ赤に火照らせて酷く慌てたように手と首を激しく左右に振った。
「ちょ、違ッ、違ェよ!!そんなんじゃねぇって、ほ、ホント、ホントに!!」
 あわあわと、普段からはまるで想像も出来ないほどに照れている様子の銀時に、山崎と原田は驚愕と同時に唖然としたものだったが、その反応をまるで見越していたかのように土方はくすくすと笑いながら、その銀色の髪を優しく撫でていた。その仕草は余りにも優しく、普段の彼とかけ離れていて、二人は思わず頬を赤らめてしまっていた。
「今更、照れることじゃねぇだろ」
「だ、だって土方ッ・・・!!」
「本当に可愛い奴だな、お前」
 何度も笑い声を漏らしながら頭を撫でてくる土方に赤く染まった頬を見せまいと顔を背けている銀時は、まるで恋をしたばかりの乙女のようで、傍から見ていただけの二人は思わず感心してしまっていた。確か彼らがこういう仲になってからもう随分と時間が経ったように思う。出会い始めは顔を合わせると怒鳴り合い、何かと競い合う仲だったというのに、人生何が起こるのか分からない。倦怠期という言葉を知らないのだろうかと、二人はぼんやり思った。
「分かった・・・じゃ、今日の夜は飲みに行こう」
「ん?そうだな・・・明日は丁度非番だし、別に構わないぜ」
「やった!じゃあ決まりな!」
「ああ。いつもの場所に・・・そうだな、八時くらいか?」
 嬉しそうに満面の笑みを浮かべた銀時は、漸くその重い腰を上げた。土方に向けて頑張ってねと労いの声をかけながら、彼は機嫌がよさそうに副長室から去っていった。そんな後姿を見えなくなるまで眺めた土方は苦笑を漏らすと、散々待たせっぱなしだった原田を連れて見回りに出かけた。


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