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サンプル
アミフェチ

 呆れたようなため息を吐きながらも、だが土方はその心地よい叫び声を聞きながらうっとりとため息を吐いた。
 何故なら彼は、声――特に坂田のように低く耳に心地よく響く声がたまらなく好きだった。いわゆるフェティシズムというものである。
 彼がこの保育園で働くことが決まったとき、同じ日に入ると知らされたのが坂田だ。彼のその第一声で、土方はもう心ときめいて堪らなかったのである。
『あ、どーも、初めまして。坂田といいます』
 こんなにもストレートに自分の好みに飛び込んできた声は未だかつてなかった。そう、初めてなのである。あまりの感動に打ち震える土方を不審な目で眺めながら眉を寄せる坂田。
『・・・あの、大丈夫っすか』
 ヤバイ。どれくらいヤバイかっていうと、使い古されまくったフレーズなのだが、もう例えとか全然思いつかないくらいマジでとにかくヤバイ。ヤバイのである。
『・・・あ、いや、・・・ダイジョウブデス』
『いやいや・・・顔、真っ赤だけど熱でもあんの?』
『い、いやいや、いや、大丈夫だから。これ普通の色だから。普段から俺こんな色してるから』
『そんな真っ赤なの!?逆にそれ大丈夫!?』
 嬉しいんだけどそんな一気に喋らないでくれ!
 ・・・などという土方の願いが叶うはずもなく。残念ながら、顔に似合わずかなりお喋りだった坂田のお陰で、土方の顔はその日一日ずっと茹蛸の色をしていた。
 今思い出せば懐かしい記憶である。
 それから毎日のように坂田と過ごしていく中で、さすがに慣れも出てきて顔が赤くなることはなくなった。彼の性格自体はあまり好きになれそうになかったが、その声だけはやはりいつまでも土方の中ではナンバーワンだった。
「おーい土方ァ、ちょっと来て」
 相変わらず耳に心地いい声だよな。下半身を直撃する感じ、あの声で色々言われたら堪らない・・・。
 お昼間の健全な保育園で、まさか仏頂面のままそんな下ネタ満載の妄想をしているなど、周りは微塵も思わない。仕事はそつなく真面目にこなす土方は、保護者や同僚の間でもすこぶる評判が良かった。
「おい、土方!聞いてんのか!」
 罵られる趣味はないが、声を荒げるトーンも捨てがたい。本当に罵られる趣味はないが、あの声で蔑まれながら弄ばれたら、長く持つ自信が・・・
「土方!!」
「うぁあッ!?」
 ぼんやりと妄想を繰り広げていた土方の耳元で、そのストライクの低音が大音量で響いた。
 ずっと呼んでいるのに振り向きもしない土方に痺れを切らした坂田が、苛立った表情で隣に仁王立ちしている。
「・・・あ、悪ィ」
「お前さー、何回呼んだと思ってんだよ!ほら、いいから立てって!お昼寝の時間だろうが!」
「あー・・・そうだな、すまん」
「しっかりしろよな」
 うとうとしている子どもたちを小脇に抱えている坂田は、そうやって土方を促しながらてきぱきと布団を敷いていく。
 彼は結構いい加減だし、面倒臭がりなところもあるが、いざ子どものこととなると本当に真剣に取り組み素早い行動が取れる、頼りがいのある男である。そういうところは、尊敬できるし好きな面である。
 ざっと布団を敷きながら子どもたちを転がしていく坂田の背中を眺めながら、土方が考えることは一つである。

 ――お昼寝の時間、ってフレーズ、ちょっとエロい雰囲気だよな。




****



 声だけで絶頂を迎えさせる。
 そう宣言した坂田は、言葉通りほとんど土方に触れることなく、耳元でただひたすらに熱の篭った声を囁いていた。
「土方って、キモチイイときそんな顔すんだね。・・・さっすがイケメンって言われるだけあるわ」
「ふ、ぅ・・・」
 艶を含んだ坂田の声は、土方の想像を遥かに超えた破壊力を持っていた。
 日常で使われる声など子供騙しだ、こんな声を聞かされたんじゃこの先、今まで通りのオナニーではきっと物足りなくなってしまう。
 びくびくと爪先から腰までを震わせながら、必死に耐えている土方は、衣服をさほど乱すこともなく快楽を感じさせられていた。スウェットを履いたままなのに、下着だけはぐっしょり濡れているのが嫌でも分かる。
「はぁ・・・ァ」
「ねぇ、・・・普段さ、どんな声で気持ちよくなってたの?」
「ど、んな・・・」
「ガキどもを叱るとき?甘やかすとき?・・・それとも、泣いてる子を慰めるとき?・・・ねぇ」
 ふっと耳元に吹き込まれる吐息にすら、快楽が全身を駆け抜ける。
 耳が熱い。それだけではない、体中が熱を帯びている。坂田の言葉を理解するよりも先に、音が体を支配していくのが分かる。
「お歌の時間、なんてお前、楽しくてしょうがなかったんじゃないの?・・・俺あんま歌うまくねぇけどさァ」
「っ・・・」
 じわじわと侵食するように、坂田の低音は土方の体を蝕んでいく。
「最近、ぼーっとしてたのは、俺の声に夢中になってたからなんだ?・・・最近は、どんなときだっけ?・・・あぁ、走り回ってたあいつらを、怒ったとき?」
 そうだ、最近はそればかり聞いていた。思い出しただけで腰が震え、欲望を吐き出したいと体が訴える。だけど、坂田の目の前で自ら自慰をするなんてとてもじゃないが耐えられない。
「ぁう・・・は」
「なぁ、お前普段、俺の声をどんな気持ちで聞いてたの」
「あ、あ・・・」
「俺がガキ共に向かって喋ってるとき、・・・普段のその仏頂面の下で、どんなこと考えてたのさ」
 言えない、そんなこと。
 そう思って、思い切り首を横に振れば、耳元で笑う坂田の吐息。
「ぁあっ・・・」
 もうそれだけで、堪らない。
 こんな声は知らなかった、想像していたよりもずっと甘く、蕩けそうに魅了する。体の奥底から性欲を掻き立てるような、全身を愛撫されるかのように響く低音。
「あは、・・・スウェットもびしょ濡れじゃん。この中、すげぇことになってんじゃね?」
「ぁああアっ・・・!」
 すっ、と静かに坂田の指が股間に触れる。たったそれだけのことなのに、下着はまたも白濁を染み込ませてじわりと濡れて行く。気持ちが悪いのに、続きを欲して腰が揺れた。
「土方くーん、腰揺れてるよ?・・・そんなにやべぇの?」
「も、・・・いやっ・・・」
「嘘言っちゃいけねーよ、土方くん、・・・ねぇ、じゃあ想像してみなよ。俺がこれから言うこと」
「い、う、こと・・・」
 吐き出す吐息は荒々しく、熱を持っている。土方は朦朧とした意識の中、甘い快楽を掻き立てる坂田の声の音から、言葉の意味を理解しようと、無意識の内に閉じていた瞳を開く。
「俺の声で、感じちゃう変態な土方くん。パンツもスウェットもぐっちゃぐちゃにして、イイ声で喘いでる・・・でも本当はさ、そのパンツの中のちんこも、おんなじようにぐっちゃぐちゃにして欲しいんじゃねぇの?」
 びくんっ、と太股が痙攣するように跳ねた。
「あは、当たりじゃん。土方くんってどこが好き?先っぽ?括れ?・・・まぁ大体、裏筋しこったらキモチイイじゃん?・・・セーエキべちゃべちゃに零しながらさ、裏筋から先っぽまで一気に擦ったらさ・・・ヤベェんじゃね?」
「ひっ・・・」
 直接的な表現に、土方の体の震えは止まらなくなる。
 言葉の意味を理解したが最後、坂田の声に誘われるように心が動く。オナニーの快感は勿論知っている、坂田の言葉と同じ動きを脳内でトレースするだけで、一物はより大きくなった気がした。
「あっ、・・・はっ、あ」
「括れのとこはさ、結構強めに擦ってもキモチイイんだよね。・・・そのまま先っぽぐりぐりしてたら、濃いやつ出てきて手のひらドロドロになっちまうんだ。それ使ってまた竿全体を扱いてやったら、・・・ど?やばくね?」
 脳内で繰り返される妄想が止まらない。もう自分ではどうしようも出来ないところまで煽られてしまった。吐き出したい、楽になりたい、だけどどうにも出来ない。もどかしさから逃げ出すように、土方は泣き言を紡ぐ。
「ぁっ、・・・あ、も、・・・やめて、」
「え、辞めちゃっていいの?ここで?・・・正直に言いなよ、イキてぇってさァ?」
「ああァ・・・」
 麻薬のような音。耐えるようにシャツの胸元を握り締めながら、坂田の声に導かれるように、土方はついに陥落する。
「は、ぁ・・・も、イキたっ・・・」
「イッちまえよ、変態土方くん」
「ぁああアッ――・・・!!」
 脳に直接注ぎ込まれるような熱い快楽に、土方は体中を震わせながら絶頂に達した。どろどろと濃い精液が下着の中で溢れ帰り、スウェットから染み出して革張りのソファを汚す。
 煽られた分溜まったそれも多く、断続的に繰り返し精液が吐き出されるたびに、土方は恍惚の表情を浮かべた。
「うっわ、マジで声だけでイッちまったの?・・・すげぇな」
 特に触れることもなく己の声だけで土方が絶頂を迎えてしまったことに、坂田は本気で驚いていた。精液に塗れた下半身で、色気を振りまきながら荒い呼吸を繰り返す土方に、坂田は思わず生唾を飲み込んだ。


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あきゅろす。
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