高鳴
イジメが、終わる?
「そ…んなの、」
このイジメが終わるなら、それは嬉しい。
でも、その条件が。
「……嫌」
「へぇ。いいの?」
「私、あなた嫌いだから」
「は、」
「自分で皆を騙しておいてそれがつまんないとか、皆を馬鹿にしたりとか、そういうの最低だと思う」
人間的に、可笑しい。
そうはっきり言えば、ツナ君は目を丸くして私を見つめた。所謂きょとん顔。
「…もう、いい?私帰りたいの、どいて」
「……鈴生は、面白いね。すごく」
「…はぁ?」
「今までの女の子は俺が本性見せたらかっこいい、とか言ったのに。鈴生ってさ、他の女の子と全然違うよね。色々」
「………」
「嫌いじゃないけど」
くすくすと笑いながら、ツナ君は漸く手を退けた。
直ぐさま帰ろうとした私の背中に、酷く可笑しげな声が降り懸かってくる。
「辛くなったら、いつでも言って。助けてあげるから」
「……有難う」
刺々しくそう返せば、やっぱりツナ君は笑った。
もうそれは、嘲笑のレベル。
「(…馬鹿にされてる)」
気に入ったとか言ってるけど、馬鹿にしているようにしか思えない。
大体何がしたいんだろう、ツナ君。結局彼は私の味方?それとも敵?
「(いや、女の敵だ)」
女で遊ぼうなんて最低過ぎる。
…本当はツナ君の本性を暴露したいけど、誰も話を聞いてすらくれないだろうし。唯一聞いてくれそうな山本君も、……友達の悪口言われたら怒るだろうな。
……山本君には、嫌われたくない。
「鈴生ー!」
「、っ!!」
急に名前を呼ばれて私は肩をびくりと震わせた。声のした方を見れば、今現在考えていた本人がこちらに手を振っている。
「や、山本君…」
「よ!どうかしたのか、こんな時間に…忘れ物か?」
「んー、まぁね」
「ていうかあれから結局来なかったし…何かあった?」
「ううん、別に。寝ちゃってただけ」
トンファーで強制的に。
「そっか!よかったー」
「………」
笑顔が、きらきらしてる。
私の事を心配してくれて、安心してくれて、こんなに笑ってくれて。
「(なんか…)」
「ん?どした?」
「え、ううん、何も!」
どきどき、する。
なんて、言わないけど。
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