one
「……え…ぶい?」
…あれか。あんなことやこんなことを録画してある奴か。
所謂、アダルトビデオって奴か。
「っ……!!!」
「どうかしたのか?そんな顔赤くして…」
「ど……うしたもこうしたも!!!そんな、AVって…ていうか、そんなっ!!わ、私に何させようとしたんですか……あ、ああ!裏方とか!機材運ぶとかそういうの、ですよね!」
「いや、録られる側」
……すざざざっ、と。私が後退りする音が響いて、私の背中が壁にぶつかるのと同時に止まった。ディーノさんは益々困ったような顔をしていた、でも実際困ってるのは私の方だ。
つまり、私に、そういう事をしろと。
「…帰ります」
「えっ!!?な、何で…」
「十分いかがわしいじゃないですか!!!嘘つき!!」
「え、ちょっ、待てって!俺、お前には才能あると直感したんだよ!」
「……何の?」
「…受け身?」
「帰る」
「待った待った!!!……あ、もしかして彼氏いるとか?」
「……いませんよ」
「なら……」
「…ていうか……キスだってした事ないし、むしろ男の人苦手だし…っ、そんな、セセセセセッ、…ク、……なんか……」
やばい。
言ってて、顔が赤くなってくのが分かる。ていうか、…自分で言ってて虚しいような気がする。
「…っとにかく、帰ります!!!」
さようなら!
そう吐き捨てるように言うと、私は扉を開けて走り出そうとした、……のに。
「ッ、わっ」
腕をぱしり、と掴まれて、突然後ろ向きの力が加わった私の体は停止させられ、ぐんっと後ろに引っ張られた。
……痛いんですけど。
「ちょっ、離して……」
後ろで私の手を掴んでいるであろうディーノさんに怒鳴ろうとした私は、思わず、停止した。
……だって、そこに居たのはディーノさんではなくて、
「ねぇ、俺とヤらない?」
そんなことを言いながらにっこりと笑う、ススキ色の髪を持ったお兄さんだったから。
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