はじめてのおしごと
「君、新人?」
嫌々ながらスタジオに来た私がまず会ったのは、私を見るなり開口一番でそんな事を言いながらこちらを見る(睨む?)、男の人だった。
「あ……はい、どうも」
「ふぅん…君、今日の僕の相手らしいね」
「え゙っ…そうなんですか?」
「…何で知らないの?しかも遅刻だし。君、常識ある?」
「え…あの」
…何で私初対面の人にこんな責められてるんだろう。
「ちょっとちょっと恭弥くん!なまえちゃん責めないで、私が急いで来てって言って来てもらったんだから!」
「ルッスーリアさん…」
「やだ!そんな堅苦しく呼ばないで、『姐さん』って気軽に呼んで!」
「………」
『兄さん』の間違いじゃないのか。
いや、ここはあえてスルーした方がいい気がする。
「ねぇ、僕は無視?いい度胸だね」
「え、あ、すみません!えーと…次からは気をつけます」
「当たり前だよ。……全く、残念だ。僕は赤ん坊が相手だと思っていたのに」
「え!!?」
あ、ああああ赤ん坊!!?
赤ん坊とヤるの、この人!!?
「あの子急な用事入っちゃったらしいのよ〜。だから緊急でなまえちゃんを代わりに呼んで新しい設定も作って、も〜大変だったの!」
「は、はあ…」
姐さんがそうフォロー(?)を入れてくれたけど、きょうや?って男の人はふん、と鼻をならしただけだった。
……なんか、ご立腹?
「赤ん坊には高い貸しができたね。こんな新人を僕の相手にさせるなんて」
あ、私が不満なのか。
私だって不満だ、何でこんな初対面の人に色々けちつけられなきゃいけないんだ。こっちは成り行きで此処に来るようになっただけなのに。
私がそんな風に思っているよそで、姐さんがうふふ〜と笑いながらキョウヤさんの方をぽんっと叩いた。
「そんなに怒らないの!それになまえちゃんはただの新人じゃないのよ、あのツナちゃんが一目で気に入った子なんだから!」
「綱吉が…?」
ちらり、と私の方に目を遣り、キョウヤさんは不敵に「へえ」と微笑んだ。
あ、悪寒。
「まぁいいや、ギャラは弾んでよね。君、名前は?」
「え、あ、みょうじなまえです」
「そう。なまえね」
何で此処の人達は皆いきなり呼び捨てなんだろう。
そう思う私を置いて、キョウヤさんはつかつかと歩き始め、あっという間に何処かへ行ってしまった。
「え、あの…行っちゃったよ」
「ほらなまえちゃん、貴女も行くのよ!」
「ば、場所分かりませんよ!」
「こないだツナちゃんとヤったとこの右隣!あ、これ今日の衣装だから此処の向かいの更衣室で着替えてから行きなさいね!」
「………」
ぼふっ、と何やら布の多い服を渡すと、姐さんは「頑張ってね!」と笑顔で言いながら何処かへ行ってしまった。
うーん、賑やかな人だ。
「(……う…まぁ、着替えるか…)」
段々と緊張がやばいぐらい高まっているけど、二度と遅刻はしないと言った手前、私は急いで着替えるより他なかった。
あの人、恐そうだし。
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