監督にご挨拶






「…えーと…みょうじなまえです」


「違うでしょ?今日からAV女優になって皆さんの下で喘ぐみょうじなまえです、でしょ?」

「…だそうです」

「自分で言えよ」



ツナさんに頭をぱかん、と叩かれたものの、私はツナさんを無視してぺこりと頭を下げた。
……なんか、皆さんの視線が突き刺さってる気が…




「なまえ…!やっぱやってくれる気になったのか、そっか!」

「…別にディーノさんの為でなく…」

「へへっ、宜しくな!」

「……」




妙に輝いた視線と眩しすぎる笑顔を見せつけられ、何も言えなくなる。
……実際は脅されて勢いに乗らされて、あげく1%はお金の為だなんて言えない。




「…そんなにディーノさんが好きなんだ、へー。じゃあなまえはディーノさん以外と撮影するようシフト組もうか、うんそうしよう」

「いや、別に好きとかいう訳じゃ…むしろ恨みが二割は入ってて、ただ性格的にまだマシな方なよーな気がするだけで」

「それかなまえは俺専用の雌犬にしてあげてもいいよ?うん、それでいい」

「めす…っ!!!嫌ですよ!!」


「あらぁ〜、その子!やっと女優になる決意をしたのね、よかったわ〜!」

「……へ?」



口調的には女、…だけど声色は男。
そんな何ともミスマッチな野太い声を聞いた私がくるりと振り向いた先には、………誰だろう…、……ていうか何だろう…




「ルッスーリア、なまえ困ってる」

「あら!ごめんなさい、自己紹介が遅れたわね〜。私はルッスーリア、これでも貴女達の監督よ!」

「か、監督……」



あ。
そういえば、最初に来た時……あの男同士の理解不能な情事をカメラで撮ってた人の横に、…この人が居たような、気が。



「(オカマですか…)」


「それにしても…貴女可愛いわね〜!ツナちゃん達には少し勿体ないかしら?」

「とんでもない。名器同士でちょうどいいよ」

「…メイキ?」

「え〜そう?ツナちゃん達は名器ってよりテクニックが上手いんじゃない?」

「あー、そうかも」

「………」





話についていけない。
このまま帰ってもいいかな、なんて思った瞬間、ツナさんが笑顔で私の腰にしっかりと手を回した。
…お察しが早いようで。




「……逃げませんから、離してくれません?」

「あれ。諦めんの早くなったね、つまんねーの」

「私で遊ばないでください!」


「まぁそれはどうでもいいとして。…今日全然人いないね、雲雀さんも骸も…ってかディーノさんしかいないじゃん。せっかくのなまえの雌豚就任挨拶なのに」

「(犬から豚になったー!!)」

「そうなのよ〜…今日は受けのコが一人もいないから撮影できないの」

「さ、撮影ないなら私帰ります!今日は挨拶だけだし!」

「あ、なまえが逃げた。アイツ受けなのに」

「ちょっとなまえちゃん、貴女シフト出さないと!それに相手は?」

「っ…もう誰でもいいです、別に!!」



もうこうなったらどうにでもなれ。
そんな思いを篭めて吐き捨てて、私はダッシュでその部屋を出た。










「――…誰でも、ねぇ…」


「あらツナちゃん、ヤキモチ?」

「別に。可愛くない奴、ツナさんだけがいいですーの一言くらい言えっての」

「んふふー、青春ね!」

「そんなのもう終わってるって…大学生だし、俺。…アイツ、次は誰にヤられんのかな」




そんな会話が繰り広げられてる事は勿論、これからぶつかる様々な苦難も知らず、私はただ、タイムサービスに向けて全力疾走していた。







第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!