魔王様改め
※色々注意








「、……」



暖かい朝の陽射しを受けて、あたしは目を覚ました。鳥の鳴き声。そんなにだるくない気分。うん、いい朝だ。
腰が痛いのを除けば。


「ん……」


あたしの腰をたった一晩で痛めた男が、あたしの後ろで声を上げた。まだ、寝てる。…まあ、昨日は色々激しかったから、疲れているんだろう。といっても、あたしの方がよっぽど悲惨だけど。


「(勝手にツナが調子乗っただけだし…)」


むしろあたしが被害者じゃん。そう思いながら、ころりとツナの方へと寝返りを打つ。自然と、あたしの手に当たったやわらかいモノ。さて、あたしももう一眠りしようかな。
……………ん?
や、待てよ。いま何気なく言ったけど、「自然と」って、…ん?不自然じゃないか?ツナとあたしの間にはクッションとかそんなものは無い。え、なんで、やわらかい?



「……………。」



恐る恐る、ツナを見る。
寝てる。安らかに、寝てる。顔は。
あたしは、ゆるゆると、視線を彼の体へと向けた。



「………えええええ!!!??」



なんで、待って、おかしい!ちょっ、……え?待って、や、…え?
……何で、ムネ、でかいの。



「ツ、ツナ、起きて!」

「ん゙ん…うっさい…」

「緊急事態なの!!やばいの!!」

「…殺すよ……」

「す、すみませ…じゃなくて!ツナ、女の子になってる!!」



そう。
胸がでかくなって、肩も丸くなって、顔もますます童顔になって。
明らかに、おんなのこ。



「…頭までイった…?」

「違う!自分の体見ろ!」



まだ起きようとせずにぐずるツナをあたしが揺さぶると、彼はそれでも目を開けず、でも手だけ動かして自分の胸に宛てた。そして在るはずのない弾力に目を見開き、停止した。



「……俺、巨乳…」

「そこ!?ちょっ、何があったとか…」

「知らないよ…夜まで普通だったんだし」


ふああ、と欠伸をしながらツナはゆっくりと体を起こした。
確かに、昨日の夜までは普通だった。何ら変わりない、魔王様だった。
ていうかいきなり女になる理由なんて、ないだろ。


「まあ、多分リボーンとかその辺でしょ…後で問い詰めれば」

「…何で慌てないの?何でそんなマイペース?」

「慌てたって仕方ないじゃん。リボーン起こすとキレてめんどいし、アイツ起きるまで待たないと」

「でも困るじゃん、ほら、学校行けないし!」

「ラッキー」

「うっ…ええと、…困るじゃん!」



あたしが他に考えた理由は外に出れないとか、誰にも会えないとか、だからご飯も食べられないとか。だけどツナにとってはずっと寝ていられて好都合に違いない。ご飯もあたしが持ってこいとか言うんだろう。
でも、困るじゃないか。
ツナは口ごもるあたしを一瞥した後、大きな欠伸をしてもう一眠りしようとした。
が、急に跳び起きた。



「うわっ!!な、なに!!?」

「……困るわ」

「え?あ、あー。困るよね!えーと…何で?」

「このままじゃ…」

「じゃ?」

「ヤれない」



あたしは盛大にずっこけたくなった。ずっこける一歩前だった。一方ツナは真剣に自分の下半身に手を遣って、「やっぱねぇな」なんて呟いている。
…うん、まあ、いい。
理由は何であれ、やる気を出してくれたのはよかった。今はそうやってポジティブに考えるとして、とりあえずリボーンちゃんのとこに行こうか。




魔王様改め魔女様





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