理解者





「俺となまえの母親。…両方が命の危険に曝されていて、でもどっちかしか助けられないとしたら、」




どっちを、助ける?






「……よくある質問だね」

「うん。でも面白い質問だよね」



答え方でその人間の心理がわかるんだから、ね。そう言ってツナは笑った。
悪趣味な奴。
まあ納得してしまった私も、似たようなものかもしれないけど。




「で?答えは?」

「…そんなの、選べない」

「よくある答えだ。そう言う奴はたいてい偽善者、表面ではよく見せようと繕ってるけど心の中では自分勝手、そんな奴だよね」

「すいませんね偽善者で」

「別に。…じゃあ『選べない』って回答は無しだとしたら、どうする?」

「……そこまでして私の心が知りたいの?」

「うん。当然だろ?恋人なんだから」




恋人、ねぇ。
愛人の方が近い存在だけど、だなんて突っ込むのも億劫だ。ただ数多い愛人の中で一番ツナに愛されていて一番『恋人』に近いのは自分だって事は分かってるから、わざわざ突っ込む気は更々ない。
寧ろ読心術使えよ、と突っ込みたい気持ちの方が大きい。




「で?どっち?」



ツナは再度尋ねた後、私の思考を邪魔するかのように首筋に舌を這わせた。
こいつ、私にゆっくり考えさせる気はないのか。自分から質問したくせに。
でもそれがツナだって分かってるから何も言わない。言わずに、ただ考える。そして、言う。







「親、かな」


「…普通嘘でも俺を選ぶべきじゃない?」

「ツナには直ぐばれちゃうし、嘘ついても意味ないでしょ。それにツナは自分が選ばれる事を望んでなかっただろうし」

「…何で?」

「自分を産んでくれた親に感謝しない女は嫌い、って」




そう考える人でしょ、貴方は。
そう言えば、ツナは嬉しそうに目を細めて、私にキスを落とした。俺の事ちゃんと分かってるのはなまえだけだな、なんて言いながら。それはお互い様、でしょう。
―――何でもいいけど、情事中に答えの分かり切った変な質問を吹っかけてくんのは止めてほしい。お願いだから焦らさないで、ちゃんと突いていただきたい。
それがツナだって分かってるから、私はその焦らしに喘ぐだけだけど。





あきゅろす。
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