◇Passing
4
4.
「……謀ったのか」
「人聞きの悪い」
翌朝、まだ寝ている雪也を置いて先に下へ下りた。
澄ました顔でみそ汁を作る麗華が胡散臭い。
「あんたがミスしただけでしょ」
「そうなる事を想定してたんだろうが」
「だーかーら何よ。どこまで素直に行ったか知らないけど。何にも聞こえなかったから安心しなさい」
「っ」
「おはよー!」
「おはよう、加奈ちゃん」
朝からテンションの高い加奈子が休みにしては珍しく早く起き出してきた。
もう今更だが麗華の態度の変わり様に若干の苛立ちを覚える。
少しすると起きたばかりの様子の雪也も目を擦りながら下りてきた。
「…おはよう…」
半分寝ている様にふらふらと向かいの椅子に腰かける。
「雪也くんおはよう。……ゆっくり休んでて良かったのに」
麗華の発する言葉の節々にからかいとも取れるニュアンスを感じるのは、意識のし過ぎだと自分に言い聞かせる。
「目が覚めたから…」
雪也はそんなこちらの事情は知らずに相変わらずぼうっとしている。
と、突然加奈子が口を開いた。
「ねー、お兄ちゃんとゆっくんって一緒に寝てるの?」
雪也の肩があからさまにびくりと跳ねて咄嗟にテーブルの下で脚を蹴る。
「った…!」
「ゆっくん狭くない?ゆっくり寝れる?」
「ばっか、雑魚寝だっつの。……ゆき顔洗って来い」
「……うん…」
雪也ががたりと席を立ち、その後ろを加奈子がカルガモのように追いかけていく。
ちらりと麗華を見ると案の定笑いを堪えていた。
End.
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