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◇Passing
3

息があがり身体が小刻みに震える。
漸く近づいた絶頂に噛む指の数を増やしてきつく目をつむった。
突然、丸めていた肩を掴まれ、上体を仰向けにされる。
真正面から見つめる瞳。
休みない自身への愛撫に表情が歪み、視界がぼやけた。
手首をつかまれくわえていた指を引き離される。
代わりのようにキスが落ちてきた。

「…っ……ん……んっ」

追い上げられる感覚。
口唇の隙間から漏れ出る声。
生理的な涙が溢れる。

「っ…――――!!」

駆け巡る快感に、目の前の身体に爪を立ててしがみついた。
嬌声は口唇に吸い込まれる。

最後まで扱き上げられ、両腕が力無くシーツに落ちた。
やっと解放された口唇が酸素を求めて喘ぐ。
焦点を合わせる間もなく視界から貴仁の姿が消えて、会話もないまま手早く後始末を済まされた。

酷くいたたまれない気持ちになり、また横を向いてシーツを被る。
激しい自己嫌悪。
自分は確かに嫌だと言ったはずで、それでもやめなかったのは貴仁。
なのに酷い後悔の波が押し寄せる。

背後に貴仁が入ってくるのが分かり、同時に虚しさが胸を去来する。
傍にいても触れ合っても貴仁が遠い。
腹に腕が回り、身体を引き寄せられた。
いらないと思う。
こんな気持ちになるだけなら身体の関係など欲しくない。

そう考えて嘲笑が零れた。
身体なしでは何の価値もない自分。
貴仁が自分のそばにいるメリットがなくなる。

好きな人とのセックスがこんなに辛いものだろうかと思う。

痛感する貴仁の想いが辛い。
回された腕は突き放し切れない優しさか。
背中を向けられた方がましかも知れないと思う。

やがて規則的な寝息が聞こえ、やっと身体の緊張がとけた。
そろそろと寝返りをうち、月明かりに照らされた貴仁をみつめる。
寝相が悪いからと、自分自身に言い訳をしてその胸に潜り込んだ。
ちゃんとできるようにする。
貴仁が満足するようにするから、捨てないで。
側にいて。
貴仁の気持ち。嫌そうな表情。冷めた声。
気付かないふりをして、優しさに甘える。
自分さえ気付かずにいれば、ずっと傍にいられる気がした。



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