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◆Before
8

ドアが開いておばさんが顔を出す。

「ゆっくん、お父さん帰ってるって。お家から電話きたわよ」

「っ……じゃあ、帰ります」

楽しかった時間の、突然の終わり。

今朝の話では遅くなると言っていたのに。
貴仁の家に泊まる話が無下になって、酷く名残惜しい思いで立ち上がる。

「…お邪魔しました」

「また今度泊まりにいらっしゃいね」

玄関で靴を履きぺこりと頭を下げると、当然のように貴仁も靴を履く。

もう一度挨拶をして貴仁の家を出た。

「いいのに」

ほんの数十メートルの距離。

口ではそう言っても本当は嬉しい。
一人ではあの場所に帰る勇気もない。

「最近どうした?」

街灯の照らす道を歩きながら、貴仁が尋ねた。

「……」

やはり普通ではないように見えてしまうのだろうかと思う。
隠しきることもできないなら、いっそ話して楽になりたい。
けれど、嫌われたくない。

知られたくない。

「父さんと……喧嘩しちゃって」

澄んだ夜の空気が満たす住宅街では小さなそれさえも響く気がして、声を潜める。

「お前が?」

驚いたような声が胸に刺さる。
黙って頷いた。

「反抗期かよ」

おかしそうに貴仁が笑う。
そう言う貴仁だって、おじさんやおばさんとあまり口をきかなくなっただろうと無理に笑い返す。

マンションの前にはすぐに到着してしまって、それじゃあと手を振った。

「早く仲直りしろよ」

頭を撫でる手の平。

「…うん」

するりと離れていく。

鉛を飲み込んだように胃が重い。






「っ…あっ…あ…」

帰るなり待ち構えていた男に服を剥がれた。
玄関のすぐそばで壁に押し付けられ、立ったまま男を受け入れる。
異常性に怯えても、抗えないなら辛くなるだけ。
心を逃がす方法を覚え始めていた。
身体を伝う手の平を、感じる熱を、快楽を与える人間をすり替える。

頭を撫でてくれた手の平。
名前を呼ぶ声。

貴仁。

「っ……ひぁ…っ!」

現実とイメージが重なった瞬間、今までにない強烈な快感が突き抜ける。

「あぁ…あっんん…!」

自制する間もなく壁に白濁が飛び散った。
がくりと膝が抜ける。

より深く内臓を圧迫する熱に悲鳴が零れた。

「はしたない子だ。ちゃんと立ちなさい」

「…っは、ぁ…っ」

意思と無関係に捩込まれ、突き上げる熱が苦しい。

「…た…か…ひと…っ」




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あきゅろす。
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