◆Before
5
「いい子だ」
「…っ…」
何度期待しても、何も変わらなかった。
一度歪んだ関係は男の手でずるずると続けられた。
あの激痛を味わったのは最初だけで、あれ以来身体を開かれた事は無かった。
その代わりに教えられた通り男の下肢に顔を埋め、張り詰める男根に舌を這わせる。
言外の脅迫。
言いはしなくとも声音は優しくとも、逆らえば酷くすると頭を撫でる男の手が重く圧力を加えてくる。
仕事ばかりであまり家に居なかった父親が、毎晩のように帰って来るようになった。
「ただいま、雪也」
「…お帰りなさい」
変わらない優しい笑顔に感じる恐怖を隠せなかった。
何でもないように話をする父親と向き合いながら食事をして風呂に入り、風呂から上がると先に済ませた父親がリビングのソファに腰掛けていた。
横を通らなければ自室には向かえない。
「雪也」
名前を呼ばれて身体が強張る。
「来なさい」
手にしていた新聞をぱさりとテーブルに置いた。
諦めと絶望が入り交じった心を抱えてソファの傍らに歩み寄る。
またかと思う。したくはない。
けれど犯される苦痛に比べればと考える打算的な自分もいた。
おとなしく従えばそれほど酷くはされないことは知っている。
ゆっくりと男の足元に歩み寄った。
少し我慢すればいいだけだと自分自身に言い聞かせる。
言われた通りにおとなしく。
黙ったまま両足の間に入り膝をつくと、ふいに遮るように男が口を開いた。
「下を脱いで、向こうをむいて座りなさい」
「っ…」
咄嗟に顔を上げ自らの腿を示す男の顔を見、向けられる視線ですぐに、逆らえない事を思い出した。
諦めてパジャマの下に手をかける。
何をされるのかわからないまま言われた通りに脱ぎ捨てる。
「全部だ」
立ち上がりかけたところで降り注ぐ言葉。
逆らうことはできずに下着も下ろして男の膝に座った。
すぐに下肢に纏わり付く手の平。
素肌を這って衣服を纏ったままの上半身へ滑り込み、息をつめる。
耳元にかかる息は熱く荒い。
指先が小さな胸の尖りに触れ、捏るように弄ぶ。
「っ…」
息のかかるだけだった耳元にねっとりと舌が這った。
びくりと震える反応に気を良くしたのか、執拗に舐め回し耳朶を甘噛みされる。
逃れようと身をよじると胸の突起を押し潰され、走る感覚に思わず声を上げた。
「や…っ」
首筋に熱い痛みが走りふるふると首を振る。
片方は胸に触れたまま、もう一方は脇腹を伝い下り下腹に触れる。
両足を閉じて腿を擦り合わせる些細な抵抗も男の手には意味をなさず、中心を握り込まれた。
「…っ」
柔柔と与えられる刺激に生まれる感覚は初めの日に感じたそれと同じもの。
「っやだ…」
反射的に口をつく。
「やめて…っ」
「……」
男の手が暴れる両脚を乱暴に両側へ開き、秘部が明るい電灯の下に晒された。
閉じられないよう抱え込んで固定し、未だ幼い性器へ愛撫を続ける。
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