愛した人の続編





たった一人、自分の事を大切にしてくれた人が居た。
その人は自分のせいで里からも、国からも迫害され、死ぬことがないオレを必死になって守ろうとして、死んだ。

その記憶は今となっては幼いオレの記憶として、霞むことはあれど未だ煌いてオレの心を燈している。


「泣きそうなんて、よく言えたものだ」
「何でだよ、何でそうやって・・・・・・」
「愛したとしても、そうやってあいつも死んでしまった、ずっと居ると言ったくせにな」
「それは・・・・・・」

ああ、見ていますか。ジャシン様、鏡に映したようなオレがここにも居ました。こいつもオレと同じ、寂しい人です。

「愛されて失うなら、最初から愛など知らぬほうがましだった」
「何だよ、それ」
「どうせ死んでいく、オレ一人を残して」

聞こえますか、ジャシン様。こいつはオレと同じです。オレを抱きしめてくれた人を失った時の、昔のオレに良く似ています。
だけれど、オレはたった一人にしか愛されませんでした。化け物だったから、皆近づかなかったから。


「だけどよぉ・・・・・・角都ぅ・・・・・・」

それでも、あの腕の温もりも、笑顔も、たった一回だったからこそ、オレの中で優しい木漏れ日となって降り注いでいるんだ。

「たった一度愛されたからこそ、その記憶を糧に生きていくことだって出来んじゃねえのか?」

読んでくれた名前の響きも、抱きしめてくれた瞬間の香りも、あの人と見た景色の美しさも、全て残っている。オレの糧となっている。


フワリ、と風が吹く。花が舞い上がって、何もかも攫っていくような強いものではなかった。
だが、遠い昔に愛した人の瞳を思わせる、強かさがどこかにあった。



そして輪廻を超えて、また戻ってくるのをオレ達は待つばかり、どんなに時間がかかろうと構わない。
だってオレ達はなかなか死ねない体なんだから。



愛された人






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