角都と飛段(少し捏造)
愛した女がいた。
その記憶は擦れもせず、褪せることも知らずオレに纏わり付く。
不意に思い出す笑顔も、眼差しも、声も、オレの糧となって絡みつき、離れようとしない。
「お前は、金さえあればそれでいいのかよ」
愛した女がいた。金よりも愛することが出来た女だった。その女もオレの事を愛してくれた。
だけど消えた。簡単に消えた。
「他人の心臓でグタグタ生きていくなんて、オレには耐えられねぇよ」
心臓を取り替えれば半永久的に生きることができた。それでもあの女の代わりなどあるはずがないから。
「角都、」
『角都』
声が重なる、あの女と飛段の声が。
「お前は」
『あなたは』
蘇る色彩、四季が狂い、表情が混ざり合う。
「いつも泣きそうな顔をしているんだな」
ああ、時間が巡りだす。
オレはまた、ここに戻ってこれたのか。
愛した人
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