鴇が少しラリッちゃっています




柔らかい黒髪は血を浴びてもその滑らかさは健全だった。白い肌はひんやりと冷たくて心地よく、残暑の暑さを忘れさせてくれた。


「朽葉、朽葉の血は赤くて綺麗だね」

何処の誰だっけ、朽葉の血は穢れているって言ったやつ。ああもうアレ本当にイラついたな、殺したいって初めて思ったよ。まあ殺したけどね。朽葉の血はこんなにキラキラしていて、真っ赤でまるで沈みかけた夕日みたい。これの何処が汚れているんだろうね。



朽葉は死にました、お侍さんの反感を買った子供を庇って斬られたのです(彼女の中の犬神が、その時泣いた気がします。お侍さんはその後意味が分からない言葉を叫びながら走っていきました。そのまま死んでしまえばいいのにね!)俺が見たとき朽葉はもう何も言いませんでした。白い顔がもっと白くなって氷のように冷たかった。血の匂いが嫌になるくらい鼻についたけど、不思議と朽葉のだって思うと全然平気だったな、やっぱりこれって愛の力?


その後様々な人が俺たちを見てきました。皆怪訝そうな顔をして朽葉を見ています、中には顔面蒼白にして指を差すおばちゃんとかもいたし(そんな汚い手で朽葉を差さないでよ、殺しますよー?って思ってしまった。いけないね、ご老人は優しくしろって朽葉がいつも言っていたのに!)お姉ちゃんどうして寝ているの?ってきいてくる子もいたのです。うるさい餓鬼だな、と思いつつ最上級の笑顔で「寝ているんだよ、静かにしてあげてね」って言ってあげました。


「じゃあ帰ろうか、朽葉」

血が抜けた朽葉を背負うことは凄く簡単でした。川のせせらぎと小鳥の泣く声を聞きながら永遠に続く、よもつひらさかを歩きます。だらりと垂れ下がった頭と夏の終わりを知らせる蜉蝣の羽ばたき。ああもう秋が来るんだ、秋は朽葉の好きだった季節なのに、いっぱい朽葉の笑顔を見れたのにと内心とてもとても残念でした。



君のいないこの世なんて、俺にとっては無限地獄(そして君が笑ってくれればどんな闇の中だって一瞬にして極楽に変わるんだ!)



そして俺はようやくこの世界から朽葉が消えたことを知ったのです。



世界は死んでいた






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