鴇と朽葉の昼下り




「俺の眼、もう治らないんだね」
「残念だけどな」
「あーあ・・・・・・」

隣に居る彼女は自虐癖というか、なんというか可哀想な女の子。俺のいた時代には絶対にいないタイプで、抱えきれない穢れを纏っている。俺がその重荷を背負ってあげようと思っても、彼女は薄く笑って俺の頭を小突くのだ。お前はこんな思いをしなくていいって泣きそうな顔で。

「俺、夢があるんだ」
「そうか、良かったな」

君は前、自分に未来は無いっていったね。でも、誰にだって未来はあるんだよ。どんな人間でも平等に与えられているんだ。だけど俺の夢は儚いそうにないね。だってそれは失われたものを取り戻すって言う、大変なことだから。

秋が深まる涼しげな風が俺達の間を通り過ぎていった。君の黒髪が揺れて、ふわりと金木犀の甘い香りが鼻腔を擽った。君の口元に笑みが差した。


『一度でいいから、朽葉を両目で見たいな』


ねぇ、遠い地にいる君は、今どんな月を見ていますか?それとも君が誰よりも愛する人の夢を見ながら眠っているのでしょうか。だけれど朽葉、俺は君がいなければ安らかに月を見ることも、幸せな夢も見ることが出来ないよ。



それでも時折君を夢に見るけれど

夢で逢えれば





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