小南受祭提出作品、その3
想いだけが収拾を付けられないほどに膨れ上がり、妄想と血に塗りたくられた恋心がお前を傷つけた。
ダークサイド
深い意識の中からオレは目覚める。朝の木漏れ日が薄汚れたカーテンから差していた。所々破れた布の端から出る糸がなぜか砂隠れにいた人々を連想させた。
「 」
思い出したのは昨日彼女と約束したときの相手の表情。まるで思春期の少女のように純粋な、そして穢れのない暖かなもの。
こういうときに、自分が生身だったらいいのにと思う。人間を捨てた傀儡のなりそこないのオレは、彼女の肌の滑らかさも、暖かな体温も、唇の柔らかさもわからない。それが酷く悔しかった。
『サソリ』
触感と痛感を失ったオレに唯一残っているのは彼女を愛する故で捻じ曲がった愛情と、聴覚、視覚しかなかった。もちろん、彼女と接吻したときに感じる唾液の味も香りも知らない。
夢心地、というのはこのことだろう。眠るということを知らないオレはただ分からずに目を閉じて彼女の影を探した。人間ではなくなったオレにも少し長所はあった。
なんと記憶がそのまま鮮明に思い出せるようになった。だからオレは昨日の彼女の立ち振る舞いも、声も、言葉も、何をしたかのかも覚えていた。
そう、オレにとって彼女は日常になっていた。そしてオレはそれを望んでいた。
寝台から降りて支度をする。約束の時間まで後数分だった。しかしここから案外近い距離になる其処。時間ちょうどに来るのがオレの流儀だった。
外を歩いていると今まで彼女と創りあげてきたものたちが鮮明に思い出される。そういえば彼女がツーマンセルであるペインに話しかけたときに殴りつけたことや、オレの相棒であるデイダラの名前を言ったときには爪を割った。ゼツに花を貰ったときは傀儡を使って陵辱したときもあった、道行く少年に笑いかけたときは・・・・・・
彼女は優しかった上に器量も、教養もあった。それゆえに慕われた、そしてそれを平然に彼女は受け止めてきた。拒絶、という選択肢をしたなかったのかもしれない。
だからオレは彼女に関わる全てに嫉妬した。そう、オレ自身にすら。
だけど彼女がオレを選んでくれた、オレをこの世で一番愛してくれたんだ。オレの中から徐々によどみが薄まっていった。
そんな風にしている間にオレは約束の場所である小屋の前に立っていた。オレと彼女以外の奴は入ることが出来ない、二人だけの秘密の場所。この中で、オレ達は愛を囁くんだ。
小屋の扉を空けると白いものが震えながらオレを見ていた。所々にオレが施した美しい傷がある。オレの愛した証、オレが愛した数。
「小南」
ああ、愛しい人。これからは純粋にお前を愛していける。ずっと一緒だって、ずっとオレだけを愛するといったのはお前だろう?オレだけを見て、オレだけの言うことを聞いて。
「さ・・・・・・そり・・・・・・」
初めて知った、愛するということ。お前が教えてくれたんだよな、小南?お前がいてくれるだけで、オレの心も、ほら。
透き通っていく。
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