カンクロウが若干病んでいます





好きな女が泣いているところは普通の男だったら大抵ウザイとか困る要因なんだと思うんだけれどオレはとてもつもなく嬉しくて嬉しくてしょうがなかった。それはきっとオレの心が捻じ曲がって、本当はしちゃいけない恋をしているから。

姉の涙はしょっぱくて、姉の肩は白くて、姉の鳴き声は蚊のようで、姉はまるで小さな少女のようだった。オレの胸の中でしくしくとただずっと同じリズムで泣いているだけなのだがオレに対して素直になってくれるこの人が愛しくて愛しくてしょうがない。姉はこうやって戦場から帰ってくるといつも泣いている。姉は母親譲りの優しさを持っていて、表面上冷え切った言葉や態度に塗りたくられた忍という任務を本当は嫌がっている。姉は小さな頃、オレに夢を語ってくれた。小さな小さな温室を作って其処で世界中の植物を育ててみたい。姉は植物を愛する優しい人だった。だからオレもその夢を応援してあげようと約束したのだ。だけれど時代は流れて、オレ達はその波に抗うことが出来ずに、姉だけが悲しい思いをして、姉だけが真っ赤な血とけたたましい悲鳴を浴びて死体だらけの道を歩んできたんだ。だからオレはそんな可哀想な姉を抱きしめる。姉は相変わらず弱くて、だけれどふんわりと温かい。髪の毛も、きめの細かい肌も子供のまま。姉は昔と同じまま。


今日も姉は子供のように泣いているんだ。オレの前にしか見せない表情も、鳴き声も、涙も、多分今でもオレだけのものだから。きっとこんなに弱い姉はオレしか知らないんだろうと思うと全身が歓喜に身震いがした。これまでどんな女に会ってもこんな思いをした事はなかったんだ。やっぱり姉だからかな、オレと同じ血が流れているからオレ達は分かり合えるのかな。もしかしたらこうやって傷を舐めあう為にオレ達は姉弟として生まれてきたのかな。そう思うと納得できる。姉弟だったらずっと一緒に入れるし、ずっとずっとテマリを見ることが出来る。オレはきっと姉がしわくちゃのババアになってもこうやって抱きしめることが出来るよ、こうやってテマリのこと愛することが出来るよ。だって姉弟だから。オレ達は離れちゃいけない、否、離れられないんだろうな。






あねおとうと





あきゅろす。
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