サソリはデイダラにご執心です





まるで不協和音のような叫び声、というか泣き声が後ろのほうから聞こえたので苛々しながら振り返る。すると其処には目を真っ赤にさせ、大口開けて泣き叫ぶガキ(デイダラ)がいて、オレの名前をしきりに呼んでいた。

「どうしたんだよ、お前」
「か、角都のやろ、が、オイラのこ、と無能、て、い、てきた」
「ったく・・・・・・あいつも余計なことを言わなきゃいいのによ・・・・・・」

まだまだ半人前で泣き虫のこいつはいつもオレの名前を呼んでいる。ウザイといえばウザイのだがオレの父性本能という物がこいつを甘やかしてしまうらしい。頭を撫でながらデイダラの愚痴を聞いてやって、機嫌が直ったデイダラの粘土遊びを見てやる。それだけでオレは何かと充実した毎日を送っていた。

「旦那のバカヤロー!!いつまでもガキ扱いしてんじゃねぇえ!」
「バカは手前ぇだ!クソガキ!」
「わぁああ!!また言ったぁああ!!」

こうやって声を荒げるのもデイダラの前だったから出来た。欠落していた感情と、遠い昔に捨てた何かがこいつといることで蘇っていった。だけれどそんな充実した毎日もある日ひょんなことで終止符が打たれたのだ。


「お、オイラあんたが好きみたいだ、うん」
「は?お前、冗談は寝言だけにしろよ」

不意に言い出したことをオレは冗談だと思って付き離す。しかしデイダラは悲しそうにニヘラ、と笑ってオレの前から立ち去って行った。

すると今までただ泣いてばかりだったデイダラの表情が急に大人びた。感情を先立たせることもなくなった。身長も伸びて、笑い方もアホ笑いじゃなくなった。完璧に、忍としてのいでたちになった。


「デイダラ、変わったな」
「そうかな、うん」
「・・・・・・オレのせいか?」
「??どうしてた?」
「やっぱいーや、今の忘れろ」


何事もなかったようにふるまった、あの時のお前のように。

今分かったかもしれない、お前の気持ちがどんなに傷ついたのか、オレの言ったことがどんなに酷かったことだったのかも。しかしもうあの頃には戻れない。もうデイダラは子供じゃない。


「旦那」
「んー?」
「オイラ、今でも好きだぞ」
「クク、寝言は寝て言え」


お生憎様、オレも愛しているんだよ!

お生憎様






あきゅろす。
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