トビとデイダラの話


「また粘土なんか捏ねちゃって、寂しい人っすねー」
「オイラはお前のつけているその橙色のお面のほうがよっぽどキモイと思うぞ、うん」
「先輩、言葉のキャッチボールって言う単語を知っていますか」

足元に転がった“作品”達にはそれぞれ名前があるらしい。左端のフクロウはキャッシーという雌の鳥らしい。その隣に寄り添うように転がっているのは雄のジャック。不思議なことに雌のキャッシーの上に乗せると派手な動きをさせながら腰を振る。いわゆる鳥流の性行為だった。

「先輩、サイテー」
「オイラはお前のグルグルした橙色のお面のほうがキモイと思うぞ、うん」
「ちょ・・・・・・言葉のキャッチボール・・・・・・」
「だから橙色のお面がキモイって」
「先輩、いい加減にしないとケツの穴掘りますよ」


それから少したつとデイダラ先輩は轆轤を回しながらしかめっ面をしていた。どうしたのかと尋ねてみると財布役である角都さんにどうせ作るなら実用的なものを作れと命令されたらしい。しかもご丁寧に起爆しない、陶芸用の粘土が用意されていたのだ。

「陶芸は久しぶりだな、うん」
「やらないんすか?」
「やり方を忘れちまったんだ」
「へぇー」

先輩は眉間に思い切り皺を寄せて轆轤の廻る様子をじっと見つめていた。

「うぇ、これ見てるとトビを思い出すな」
「“うぇ”とかって本人の前で言っちゃいけませんから、地味に傷つきますって」

数時間もするとやはり粘土を扱っているだけはある。作品らしいものが出来上がってきた。だけどそれは平凡な皿。それはもう、本当に平凡な。

「先輩、一言いいすか」
「何だよ」
「オレ、いつもの先輩の作品の方が好きかもしれません」
「・・・・・・」

なんだか悪いこと言ってしまったかな、と思って先輩を良く見ると、彼の頬は薄く赤みを差していて、見るからに照れているのだと分かった。いつもの自分なら盛大にからかっているところだが、自分が言ってしまったことに恥ずかしさが今更込み上げてきて、しかもなんだか彼を見ていたらこっちまで照れくさくなってしまった。


ああ、もう!こんな筈じゃなかったのに!



オレ達は思春期の中学生か!

笑うしかない







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