紺朽←←←鴇なおはなし






朽葉のうなじについた赤い斑点。なんだろうと思って彼女に聞いたら朽葉も知らない、という。なんだか座割り、といやな胸騒ぎがして、彼女を力いっぱい抱きしめた。予想通り、篠之女がつけている香水のにおいがした。


思えば俺がこの厄介な病気に気付いてから朽葉という女性の顔をまじまじと見れたことは無い。何気なく俺の方に手を置いたり、本当に無意識に俺の名前を呼ぶ彼女に俺は心臓をドキドキと高鳴らせた。苦しい、というかなんというか。そんな痛みに核心を突いたのは、ある夜朽葉と親友だと思っていた篠之女が口付けをしていたときだったか。優しい彼のことだから、きっと朽葉のことを大切にしているのだろう。ゆっくりと、壊れ物を扱うように唇を重ねていた。


口付けをしているときの朽葉を、あの時の俺はどんな目で見ていたのだろう。きっと一人の人間、というよりは女性として、異性としてみていたんだろう。抱きたい、朽葉を狂わせたい、彼女が乱れ、悶える姿が見たい、そんな汚い目で見ていたのか。


白いうなじに、ポツリと赤い斑点が浮かんでいる。俺がそれを指摘すると朽葉は困ったような表情をしていた。きっと鈍い彼女のことだから、これがどんな意味を示すのか知らないのだろう。
だから俺は一つだけ、印を付けた。篠之女への挑戦状、というには物騒だけれど。俺は応援しませんよ、という意味。



穢れ無き彼女の掌にい印を






あきゅろす。
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