カンクロウとテマリが心中する話







浴槽にポチャンと水滴が落ちる。近いようで、遠い。耳元の男の吐息がフッとかかり、私は全身をブルリと震わせた。


男と私は姉弟だった。ちゃんと血も繋がっているし、ちゃんと同じ父親と同じ母親の間から生まれたし、ずっと、もしかしたらこれからも姉弟であることを否定することは無いであろう。だから今こうやって狭い浴槽に二人水を満遍なく浸したそこに入って、こうやって寄り添っているのだ。私たちは姉弟である前に恋人同士だったから。

今こうしているのも禁じられた楽園に踏み込んでしまった罰を自分たちで下すのかもしれない。現に、私を背後から抱きしめるようにして座っている弟の手には鋭い切っ先を光らせる大刀が握られている。これを一気に貫けば、きっと私を貫いたその刃物は体を通り越して弟の心臓を突き破るだろう。それでいい、いや、それがいい。こうやって愛する男と一緒に死んで、今度こそ誰にも口出しされない自分たちだけの楽園を見つければいい。そうすれば、

テマリ、と弟が私の名前を呼ぶ。その声は少し擦れていて、だけれど涙で僅かに濁っている。ああ、私も悲しいよ、カンクロウ。お前と私が姉弟じゃなければこんな思いも、こんな末路も迎えなくて良かったはずだ。二人水の中で息絶えることも、なかった。

姉、という存在だけで生かされていればよかったのに。私の中で女という汚いモノが生まれない限り、私は弟のたった一人の、清い姉でいられたのに。




(弟の腕に、力が篭る)(永遠のような時間が過ぎた後、愛している、といいながら弟が私の胸に刃を当てた)






あきゅろす。
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