現代物につき注意






真っ白なドレスが視界の端に映る。正面から朽葉の表情は見えない。多分それは俺が彼女のことを愛していたからで、顔を見れないほど苦しいから。好きだと気付いた時にはもうとっくに遅すぎて、だけどこの想いは止まらなくて。それなのに、無理矢理あいつから奪えば良いじゃないかと思ったときもあったけれど、やっぱり今になってはこれでよかったんだと自分に言い聞かせる毎日。悲しくてしょうがない。でも今このときも、朽葉は嬉しそうに笑っているだろうから。


誰もいなくなった静かな教会の中、俺は一人ぼぉっとしていた。紺は朽葉を幸せにすると俺に言ってくれたし、朽葉もきっと幸せになって見せると俺に約束した。だけれど俺の悲しみは一向に収まらなくて、彼等の幸福に満ちた顔を思い出すと無性に涙が出てきた。きっと俺はどこかで、三人仲良く一緒に、ずっといられるんだと思っていたから。結局一人残された俺には、彼女を思う気持ちと彼を慕った思い出だけ。


顔を上げると優しい顔をしたマリアの石像が俺を見下ろしている。ステンドグラスから降り注ぐ光りは俺の涙までその色に染め上げた。赤い絨毯に寝そべって思いっきり泣いた。真紅に俺の目から出た雫が染込んで黒ずんでいく。明日もこの絨毯の上を幸せそうな新郎新婦が通っていくのであろう。世界は俺を残して微笑んでいるということに無性に苦しくなって、俺は嗚咽を上げた。協会の中に俺の声だけが響き渡り、マリアはそんな俺をまるで自分の子供を見るかのように優しい眼差しで見つめている。朽葉、と名前を呼んで俺はマリアにしがみついた。





(マリアは俺の頭を撫ぜる)(その掌の温もりを、俺は知っている)






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